NEW TOPICS

  1. HOME
  2. ブログ
  3. COLUMN
  4. デキル女のナウシカ症候群 ― 強い女ほどハマる、責任とロマンスの罠

デキル女のナウシカ症候群 ― 強い女ほどハマる、責任とロマンスの罠

「赤裸々にお願いします。全部話します」

その一言で、スタジオの空気が少し変わった。元TBSアナウンサー、木村郁美さん。朝も昼も夜もマイクの前に立ち、一時期はレギュラー番組が9本同時進行だったというから、もはや“華やか”という言葉の定義を更新してしまうような人だ。

「もう、起きた時が朝なのか夜なのか分からないほど働いてましたね」

と笑う郁美さんに、思わずこちらも頷いてしまう。

働き方改革など影も形もなかった時代。“24時間働けますか”のコピーが現実に生きていた頃。その世界で、女性がキャリアを積み上げるということは、文字通り命を削る仕事でもあった。

刺激中毒と「魔が差す瞬間」

郁美さんが振り返る。「アナウンサーの仕事で一番の魅力は“人との出会い”でした。普通の人なら話しかけられないような人に、マイク一本で近づける。街の声から、著名人の本音まで。世界がどんどん広がっていく感じがありました。」

横でうなずくのは、“女のプロ”こと川崎貴子さん。
結婚相談所「なちゅ婚」主宰で、“魔女のサバト黒魔女担当”の異名を持つ。

「そうなんです。ただ、刺激的な毎日を送っていると、その“刺激”がないと呼吸できなくなる。で、婚期を逃すか、変な人捕まえるか、究極はその二択になるのよね」

一同、爆笑。でも笑いながら、全員がどこか心当たりがある顔をしていたのを見逃さなかった。

「無人島でも生きていけそうな男」に惹かれるワケ

「わかります、私もそうでした」と思わず口を挟んだのは私、近藤でした。

「1回目の結婚相手は“無人島でも生きていけそうなワイルドさ”に惹かれて選んだんです。でも別れるときには、それが本当に嫌になってた。『俺は地球を守る!』という彼の言葉に最後は、『その前に家を守れ!』って思いましたね」

郁美さんも苦笑しながら続ける。「私もバツイチなんですけど、“周りにいないタイプ”に惹かれた。後から思えば、完全に“魔が差した”としか思えないんです。」

そう、“魔が差す”瞬間。

それは、責任感のある女性ほど訪れる。社会の中で、誰かの期待を背負って立ち続けてきた人ほど、ふとした瞬間に“強引にさらってくれる誰か”を求めてしまう、と川崎さんが分析。

「頑張ってる女性ほど、“誰かが強引にどこかに連れ去ってくれないかな”ってどこかで願ってるの。でもそれが“悪魔”を呼び寄せちゃうのよ。」

悪魔は、女が弱った時にやってくる

郁美さんが言った。「私、あのとき本当に体調がボロボロだったんです。どの病院に行っても原因が分からない頭痛、顔に突然出る蕁麻疹、もう“心がSOSを出してた”んですよね。そんなときに現れたのが、その“悪魔”でした。」

彼は、強引で、エネルギッシュで、「俺についてこい」というタイプだった。
「もうその羽の下に入れば安心できる」そんな錯覚を与えるような人。

「そうなの、悪魔って、鼻が利くんですよ」と川崎さん。
「弱ってる女の気配を、ちゃんと嗅ぎつけてくる。だから、気をつけないと。」

・・・もう、笑うしかない、という種類の“共犯的な痛み”が漂った。

女の責任感は、魔法でもあり呪いでもある

「当時は、『私の稼ぎでやっていけるから大丈夫』って思ってたんです」と私が言うと、川崎さんがすかさず頷く。

「そうそう、“自分で稼いでるし”っていう驕りね。だから見極めが甘くなるの。
ちゃんと生活できてるから、恋愛に関しては“遊び”の延長でいいやって思っちゃう。でも、そこに限って“変な人”を掴むのよ。」

つまり、“自立している女性ほど、恋愛で転ぶ”というパラドックス。

「ナウシカ症候群」——救うことで自分を保つ女たちへ

川崎さんが言葉を継ぐ。

「私、“ナウシカ症候群”って呼んでるの。危なっかしい男を見ると、“私が救ってあげなきゃ”って思ってしまう女性たち。それはね、優しさの裏にある、“誰かに必要とされたい”っていう孤独の表現なんです。私だけがオームのことを分かってあげられるって。でも、どこまでいってもオームはオームなのよ。」

郁美さんが、静かにうなずいた。

「私もそうでした。『家庭の味を知らない』って言われたとき、“私がその愛を教えてあげよう”って思っちゃったんです。」

スタジオに小さなため息。
それは悲しみではなく、“わかるよ”という共感の呼吸だった。

加齢応援マガジン『ウナタレラジオ』特別回 第一回

ゲスト:木村郁美 × 川崎貴子 × 近藤洋子


[この記事を書いた人]ウナギタレ子(Taleko)

1972年生まれ。加齢応援マガジンUNATALE(ウナタレ )の編集部員にして哲学的お節介人。A面よりB面、タモリ倶楽部のの隣にいたいタイプ。
「まぁ、ええやん」と笑いながらも人生の奥行きを見つめるのが得意技。若造りはしないけど、美意識は忘れない。
SNS映えより、心の温度を1℃アップ。

今日も読者の足元に、そっと灯りを。
加齢応援マガジンUNATALE   https://unatale.com/

関連記事

人気記事ランキング