タンゴが教えてくれた「自分の軸」の見つけ方。
あの人は、この部分を気にするから注意する。
常識的に、これはこうするべき。
一般論として、それはありえない。
大人の社会で生きていると、自分の感覚や直感よりも、「他人の目」を優先しなければいけない場面が増えていく。
そんな「他人軸」を積み重ねていった結果、気づけば自分の軸が見えなくなっていた、なんてこと、ありませんか。
「他人にどう見えるか」が、すべての判断基準だった頃
日本で仕事をしていた頃、私が気にしていたのは、いつも「相手や他人がどう思うか」でした。
自分の感覚や直感といった、目に見えないものよりも。他人の視線や、相手から自分への印象の方がずっと大事だった日々。
上司が仕事の何をチェックするか、事前に傾向と対策を打って上司の不機嫌から逃げ切れたか。
仕事が残っていたというより、残っている人に合わせての残業。
強くてきつい女と思われたくなくて、男性が好む女性像や洋服や化粧を勉強して、行き遅れって言われるのが嫌で、30代独身OLの自分の振る舞いに悩んで。
重たくない女、結婚にすがらない大人の女性になりたくて、結局は都合のいい女になってしまったり。
東京のタワマンを買って、バリキャリして生きる女性に憧れて、仕事に夢中のつもりになったり。
自分ではごく一般的な東京の働き女子だったと思うのだけど、今になって思えば私の思う「一般的な女子」でいるために、ずいぶん努力をしていました。
そうしていないと、自分が無価値であるかのような感覚があって、その上、その感覚は自分だけでなく、同じ価値観でない人に対しても向いていたと思う。
でもその努力には、窮屈な箱に自分を押し込めるような圧迫感と、その箱に入るために自分を騙して誘導するような、拒否感があった。
タンゴが「自分の足で歩け」と言った
そんな私に「自分の軸」を探せ、と教えてくれたのがタンゴでした。
他人に自分のすべてを委ねるのではなく、他人と共に歩くタンゴには、自分の足で歩く強い軸が絶対条件。
自分の軸があるからこそ、他人を尊重し共に歩める。
タンゴはそれを身体で教えてくれました。
当時の私には、踊りとしても、生き方としても、軸がなさすぎてこれがとても難しかった。それは、タンゴも人生も誰かが「良い」と言ったものを生きようとしていたから。
東京のIT企業の安定した仕事をやめ、35歳で単身アルゼンチンに留学すると決めたとき、他人から見れば無謀な決断だったかもしれない。
ただ私にとっては、自分軸で人生を立て直すための、最後のチャンスだったと思っています。
「好き」を深く掘ることが、軸をつくる
アルゼンチンに来てから、私は自分の「好き」について深く探すことからはじめました。
自分の好きなダンサーを探して、このダンサーの踊りの何が、どこが好きなのか?逆に、あまり好きではないダンサーは、私の中で何が引っ掛かるのか。
それをすべて言葉にして、怖がらずに他人と意見を交換することで、自分の気持ちが少しずつ明確になっていきました。
好みを持つこと。理想を言葉にすること。
その積み重ねの中に、大切なものや譲れないものを明確にして「自分の軸」を見つけていく過程がありました。
「嫌い」も「苦手」も立派な自分の気持ち
もし、他人軸に疲れてしまうことがあったなら。
まずは自分の「好き」を深く考えてみてください。
「嫌い」や「苦手」はマイナスと思いがちだけど、私はネガティブな感情も大切にしています。それは、ポジティブだけなんて不自然だから。
良いことの裏には、悪いこともあって当然です。
なぜ、それが好きなのか。
なぜ、それが好きではないのか。
他の人はそれに対してどう思っているのか。
他人の意見に対して、自分はどう感じるのか。

自分の気持ちと深く対話することで、「自分の軸」が見えてきます。
素直に意見を言ったり、議論したり、疑問を口にすることは、悪いことではありません。もし誰かに言いにくいと感じたら、紙に書き出してみるのもいいかもしれない。
常に「正しいか・間違いか」で判断しなくていい。なぜそうなったのか、それについて自分はどう思うか、他人の意見はどんなものがあるのか、そしてそこから何を学べるのか。
深く考える習慣の中で、自分の軸が少しずつできていく。そして大切に育てた自分の軸と同様に、他人の軸も同じように大切なものだということも、自然と学んでいくのです。
そうして育てた軸は、他人が何を言ってもふらつかない。他人の意見も「そう考えるんだね。」と大きな気持ちで聞けるようになる。
タンゴと一緒で、誰とアブラッソ(抱擁)してもふらつかず踊れる自分になるのです。
まずは自分の「好き」を丁寧に見つけてみてください。
それではみなさま。
¡Abrazo grande!(あなたに大きな抱擁を。)

[この記事を書いた人]AKANE
タンゴライフアドバイザー・タンゴダンサー・講師
1980年生まれ。日本での会社勤めを経て、35歳で南米アルゼンチン・ブエノスアイレスへタンゴ留学。本場のタンゴから“身体と心のコミュニケーション”の豊かさに魅せられる。
タンゴを通じて「抱擁・リード・呼吸・間(ま)・非言語のやりとり」の哲学に触れ、それを「パートナーとの関係性」「日常の愛情表現」「夫婦の時間」「男女のコミュニケーション」の視点で読み解けないか日々妄想中。
ウナタレでは、アルゼンチンタンゴの抱擁・会話・距離感を通じて学んだ、自分と大切な人との関係を見つめ直す“気づきの時間”をお届けしたいと思っています。
私の好きなブエノスアイレス
https://akanetanguera.com/