人と交わるから世界が広がる
博報堂生活総合研究所が25歳〜39歳の男女を対象に行った調査で、「ひとりでいる方が好き」の割合が「みんなでいる方が好き」を逆転したのだそうです。私もひとりの時間は好きだけど、みんなでいる時間も大好きよ。
私がひとりでいる時間が好きなのと、若い人たちの「ひとりでいる方が好き」というのは、どうも意味合いが違うような気がします。私の場合は、めっちゃ社交性的で人といるのが大好きなんだけど、ボーッと海外ドラマを観たり絵を描いたりする時間が要るからひとりでいる必要があるわけで、孤独を好んでいるというわけではない。内省することも若い頃散々やったから飽きちゃったしね。でも若い人たちは人と関わること自体が面倒みたいなのよねえ。
ヒトは集団で行動する生き物です。動物としてもそうだし、実際問題としてひとりで生きていけるはずはない。食べものの確保に困るような時代であれば、協力し合わないと生きていけなかったから助け合う仲間がいるのが自然でした。翻って、今は食べものはどこにでもあるし、情報はスマホで得られるからコミュニケーションも要らない。文明人の性ですね。
でも私自身、人と関わることによってどんどん人生が開けて楽しくなっていったので、若い人たちにもそういうことを経験してほしいと思う。そりゃ、人と関わるのは時には面倒臭い。でもそれ以上に受け取るものがあると思うのです。だって、新しい展開は新しい出会いの中からしか生まれないから。ある人と知り合ったことで、全然関係なかった別の人が自分に幸運をもたらしてくれることは往々にしてある。
恋愛とか結婚とかって、するもしないも個人の自由だし、そういうことをとやかく言うのは今のご時世ではタブーとされているけど、この流れを見ていると人類は確実に滅亡しますね。人との関わりに興味がない人にとっては、そんなこと知ったこっちゃないんだろうけど、私は人間が好きなのでできれば滅亡してほしくない。
当たり前のことだけど、思いやりとか愛情とか他人に対する温かさって、関わりの中からしか生まれないのです。本当に嬉しいことって、人に喜ばれたときだったりもします。だからひとりでばかりいてはダメ。人と会って、交わって、関わっていくことは、自分の中のやさしさを育てることにもなるし、嬉しいことや辛いことを「経験する」ことこそが、生きているってことだから。
[この記事を書いた人]やまざき ゆりこ
娘2人がまだ幼い30代前半のときに在宅ワークができるという理由でコピーライターになる。同時期に、伯母の勧めで書と墨絵を始め、以来文章を書くことと絵を描くことがライフワークに。6年前、思いつきで始めた日本画で色の世界にハマり、コロナ禍のおうち時間に身近な動物を描いていたらいつの間にかペットの肖像画家に。57歳で熟年離婚。現在はフリーペーパーのコピーライターをしながら、オーダー絵画の制作に勤しんでいる。着物好き、アート好き、美しいものが好きな1957年生まれ。
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