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バチェラーのウナタレ的考察をしようじゃないか

Amazonプライムビデオで見られる恋愛リアリティショーの大人気コンテンツ「バチェラー」シリーズ観ていますか?先日、こちらの日本版シーズン6が最終話までアップされました。スペックの高い成功を収めた独身男性(バチェラー)が運命のひとりを見つける旅として、多数の女性参加者から絞り込んでいくという内容のこの番組。男女逆転バージョンの「バチェロレッテ」も合わせて、人気の高い番組のひとつです。

20代から30代前半くらいの男女が、この人のことを好きになれるかどうかを、海外リゾートのいい感じの場所で、カクテルパーティしたり、一緒にご飯作って食べたり、買い物したり、ヘリや船に乗る企画もののゴージャスなデートしたりしながら、相手を理解しようと頑張るわけです。男女の恋愛駆け引きだけでなく、参加者の女性たちが互いに牽制しあったり、喧嘩になったり、時々は同じ境遇の連帯感が出てきたりしつつ、結婚とは?を探っていく内容です。選ぶ側は、もう少し旅を続けたいと思う自分の好みの人に赤い薔薇を渡し、その薔薇の数が回数を追うごとに少なくなり、最終的には二、三人に絞られて、それぞれの両親とも会ってもらったりしちゃう、という身も蓋も無い戦いなわけです、はい。

そんなバチェラーシリーズ最新作のシーズン6には、あの共立美容外科グループの御曹司である久次米一輝(くじめかずき)さんがバチェラーとして登場します。本人も医師で、抜群にカッコいい容姿で、話し方も温和という非の打ち所がないキングオブバチェラーっぽい人がとうとう出て来られたわけです。MC担当のさっしーは、ことあるごとにバチェラーのかっこよさにコメントし、「ずっと見ていられる」とベタ褒め。たしかに画面に大写しになっても、甘く、ちょっと可愛らしい表情は母性本能をくすぐります。リアリティショーの出演者としては申し分ない。

とはいえ、いくらかっこいいバチェラーが出ているとはいっても、われわれウナタレ民にとってみれば、自身の子供たちと同じ歳くらいの男女の恋愛模様に、そこまで感情移入できるわけではなく。気になるのは、もっと違うところだったりします。

画面を見ながら、このバチェラーの整った顔は共立美容外科のスキルなのか、それともナチュラルなのかを判別したい欲にかられ、さらには、このバチェラーが選ぶ女性は、ナチュラルな顔のままがいいのか、それともちゃんと手が入れられている抜群の容姿のほうがクリニックのPR的にいいのかと、おせっかいながら美容外科のブランディングとPR戦略に想いを馳せてしまいます。どっちにしても、若い世代がターゲットでかつ、意識高い人たちが見る番組に、御曹司かつ将来の医院長が番組に出る効果は、テレビCM一本打つよりもずっと高いのではないかと、頭の中でエクセルにいろいろ打ち込んでしまいます。

さらには、この穏やかそうなバチェラーの性格は、経済的に恵まれた家庭環境と生育条件があったからからなのか、はたまたご両親の教育方針のたまものなのかなど、ビジネス目線だけでなく、親として教育環境を選ぶ視点まで加わって、純粋にこの番組を楽しむことなどできません。およそ恋愛とは関係ない邪念ばかりが頭をよぎるのです。

最終話近くには、バチェラーのお父様とお母様がそろって登場し、さらにウナタレ年齢層視聴者に別のインパクトを与えてくるのです。お父様はさておき、お母様よ。ピンクのヘアカラーのお母様よ。おそらくお母様も(見た目)50代。我々と同じような世代です。抜群の経営手腕を持つ夫と、イケメン優秀な息子を持つこのお母様が、髪はピンク、さらにピンクのブラウスをお召しになってご登場とは、だれが想像したでしょう。いい、すごくいい。素敵すぎる。

聞けば、このお母様は社交ダンスのガチ勢で大会へも出場される方とか。その界隈では知られた存在なのだそう。私の友人もたまたまそのことを知っており、このお母様のダンスへの本気度合いがうかがえるエピソードなども聞きました。なにそれ、かっこいい。

経済的に恵まれた夫を持ち、優秀なイケメン息子がいるにはいるけど、それはさておき、自分が好きなこと、自分自身としてやりたいことを貫いている。どれだけお金があっても、子供が良い子でも、自分の体を使って行う競技は、自分でなんとかしないと先に進めない。もちろん、それを支える経済的な優位性はあるにしても、そんなことを上回る“ガチな努力”がないと、ダンスなんてできない。趣味はワルツを踊ることです~とか言って、週に一回ダンススクールに行っていた私が言うのだから間違いない。このお母様の趣味は主婦の習い事レベルじゃないのだ。ピンクの髪と、ピンと伸びた背中に、その清々しさが現れているようです。単なるお金持ちの奥さまじゃない。全然ない。自分の好きなことをまっすぐにやっている、意思の強さやしなやかさ。わたしたちはよく、自己実現とか、自己鍛錬とかいうけど、実際のところなかなか本気になって何かを続けることは簡単ではない。結婚して子供がいたりすると特に。

若い子の恋愛リアリティーショーではあるけれど、この番組でウナタレ民が一番見なきゃいけないのは、このお母様だと声を大にして私は言いたい。ぜひとも最後の3話くらいはぜひ見てほしい。同世代の楽しげな姿ほど、元気になれるサプリはない気がするのだ。幾つになっても好きなことして、好きな服着て、好きな髪にしている女性は、やっぱりいいものよね。

渋谷ゆう子


[この記事を書いた人]渋谷 ゆう子

香川県出身。大妻女子大学文学部卒。株式会社ノモス代表取締役。音楽プロデューサー。文筆家。クラシック音楽を中心とした音源制作のほか、音響メーカーのコンサルティング、ラジオ出演等を行う。音楽誌オーディオ雑誌に寄稿多数。
プライベートでは離婚歴2回、父親の違う二男一女を育てる年季の入ったシングルマザー。上の二人は成人しているが、小学生の末子もいる現役子育て世代。目下の悩みは“命の母”の辞め時。更年期を生きる友人たちとワインを飲みながらの情報交換が生き甲斐である。
著書に『ウィーン・フィルの哲学〜至高の楽団はなぜ経営母体を持たないのか』(NHK出版)、『名曲の裏側: クラシック音楽家のヤバすぎる人生 』(ポプラ新書 )がある。

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