NEW TOPICS

  1. HOME
  2. ブログ
  3. COLUMN
  4. たかが仕事で死んだらダメ

たかが仕事で死んだらダメ

新入社員研修の講師を今年もお引き受けしました

昨年、10数年ぶりに講師仕事を引き受けたのは、ギャラの良さに目が眩んだから。

最初に研修カリキュラムを見たときも、正直、「こんな通り一辺倒のビジネスマナーを教えて彼らの役に立つの?」と疑心暗鬼でした。受けておいてなんですけど。

でも、準備を進めていくうちに、疑心が晴れていく。

「あれ?わたし、、、教えられることも、伝えたいことも、山ほどある!」

そりゃそうなんだわ。

おまえ、いま何歳だよって話で。
一度も結婚も出産もすることなく、仕事だけしてきたんだから。
20代後半〜30代前半の若さで講師をやっていた頃とは、重ねてきた経験数が違う。積み重ねた経験による厚みも違う。

研修カリキュラムのすべての項目において「新入社員たちを震え上がらせる実体験」を語れる。まかせとけ!

今年も彼らを震え上がらせたい

去年の研修では、クレーム対応のセクションで「社長と一緒にお客様のところへ謝罪しに行った際、同行していたコミュ力低い同僚が、悪気ゼロで火に油を注ぎまくった話」を披露。
会場がシンと静まり返りました。みんな息を殺して聞いてくれてた。ああ、快感。

敬語スキルより遥かに大事なこと

どの企業の受講生も熱心な受講態度でして。
なぜか?人事部長がオブザーバーで入っているから?
と思ったら違った。
みなさん、配属先で上手くコミュニケーションが取れるかを不安に感じていた。たまに数名紛れ込んでいる入社2-3年目の受講生は、上司との日頃のコミュニケーションに悩んでいた。

敬語の言い間違いを指摘すると、みんな顔が引きつる。青ざめる。
違うんだよ。大丈夫なんだよ。研修だから正しい言葉遣いを教えるけれど、尊敬語と謙譲語を言い間違えたって死なないから。
みんなには、見えない初心者マークが付いてるんだから。

大事なのは「てへへ」と愛嬌を振りまけるかどうか。そっちなんだ。
なにもできない自分を上手く誤魔化して「メッキ仕様の即戦力」に見せるよりも、「いろいろ教えてあげたくなる人」でいることのほうが大事なんだ。
問われるのは人間力。

熱心な受講生が、休憩時間に真剣な面持ちで質問をしてくる。

「上司にどのくらい細かく報告していいかわからないんです」

「前の上司は【自分で進めて結果だけ教えて】というタイプだったので、細かく報告することに慣れていないんです」

「どのくらいの細かさで報告すればいいものですか?」

全部、マニュアルがあると思っているのね。
そんなのないんだわ。とくに対人関係においては。

わたしの答え
「その上司に聞けばいいじゃん。どの段階で報告したらいいですか?って」

受講生「聞いちゃっていいんですか?」

わたし「なんで聞かないんですか?」

生真面目な彼女の職場にいますぐ行って、上司との関係性をフォローしてあげたい。

頼り上手な20代ギャル

講師業とは別に、業務委託契約でお仕事をさせてもらっている会社に20代のギャルがいる。コミュ力は高いほうなのだけれど、「初対面の相手との交渉」となると話は別らしい。

「イベントに協力してもらいたいお店に交渉しに行くんですけど、一緒についてきてもらえませんか?」

えーだるいー

でも頼ってくれるのが嬉しいのと、彼女の頑張りを知っているので同行。結果、交渉相手に向かって喋るのは、ほぼ私。

「お店に協力してもらえることになって良かったです。佐藤さんが交渉してくれなかったら、こんな上手く話がまとまらなかったと思います・・・」

己の非力さが悔しいのか、私に向けた笑顔が少し歪んでいる。
悔しいと思えるあなたの負けん気の強さが素晴らしい。伸び代しかない。

みんなそんなんで戦える?

昨年の研修にて。
最後の挨拶で受講生のみなさんにエールを送ろうとしたら、声が詰まり、泣きそうになった。恥ずかしすぎるのでギリ堪える。

みんな真面目すぎる。
これまでの人生で目上の人との接点が少なかったのか?対人コミュニケーションに不慣れすぎる。上下関係が厳しいバイトとか経験してたら良かったのに。

全国に支社を持つ企業の場合は、数ヶ月後には同期とも離れ離れになり、地方へ点々と配属されていく。

大丈夫?

そんな繊細さんで、友達ひとりもいない土地でやっていける?
意地悪な上司や理不尽な要求をしてくるお客様と戦える?
戦闘力、弱すぎないか?

Z世代と呼ばれるみなさんへ

大変な時代に社会人になりましたね。

私が20代のときには、ファイリングという謎職種(派遣業務)があって、ちょっとした事務とかお茶汲みをやるだけで、フツーにお給料がもらえました。牧歌的でした。のんびり育ててもらえる時代でした。

当時、Windowsは3.1で、少ししてから95が出ました。そんな時代。
事務仕事の大半をアナログな人力でこなしていた時代。

いまはお茶汲みはおろか、ちょっとした事務仕事や「決められたことをやればいいだけ」の仕事も激減。文書作成はchatGPT様のお仕事。人間出番なし。じゃあなにやればいいの?

わたしのところには、日々「交渉力を必要とする仕事」がまわってきます。みんなができないから。どんな仕事もコミュニケーション力や交渉力がないと、ひとりでは完結できないのです。

厳しい時代だ。

AIに仕事を奪われ、私たちの仕事のハードルは一気に上がった。

そこに「ほぼ丸腰」で立ち向かうみなさんのことが、心配で心配でなりません。

新入社員研修で伝えたいこと

仕事は間違いなくその人を成長させてくれるけれど、自分を追い詰めすぎると死に至ります。

研修でも3つのゾーンについて教えています。

・コンフォートゾーン:場所、仕事内容、関わる人がある程度限定
(ストレス無し、成長もほぼ無し)

・ストレッチゾーン:コンフォートゾーンの外
(ストレスあり、成長あり)

・パニックゾーン:行き過ぎの状態、適切な判断ができなくなる
(ストレスは危険レベル、成長あり)


30代のときに同僚が自殺してしまったのは、自分を追い詰めすぎた結果、パニックゾーンに入ってしまったからだと、いまならわかる。生真面目な人だった。

わたしも当時、気付けばパニックゾーンの淵に立っていて、同僚が死んだことで我に返り、「立場ある職務ゆえの責任感」と「プライド」をかなぐり捨てて、ギリギリのところで生還しました。

コンフォートゾーンでぬくぬくしてると、いつまでたっても成長しないし、つまんない人になっちゃうんだけど、ストレッチゾーンとパニックゾーンの見極めをちゃんとしないとまずい。

研修で習ったビジネスマナーは全部忘れちゃってもいいけど、仕事で凹むことがあったとき、

「ストレッチゾーンにいたら凹むこともたくさんあるんだよー、みんなそうなんだよー、凹むのはストレッチゾーンにいるってことなんだからすごいんだよ。だから必要以上に凹む必要はないんだよー」

私がそう力説していたことだけは、どうか思い出してほしい。

一期一会的に関わらせてもらったみなさんが、未来永劫、おきあがりこぼしでいてくれますように。毎日楽しくやりがいを持って仕事に臨めますように。
強い気持ちを保ちつつ、それぞれの場所で成長していってくれますように。

4月の新入社員研修で、強く強く伝えていきたい。

関連記事