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他愛もない会話に救われることがある

ブラッシュアップライフ観てました?

わたしは1話だけちゃんと見て、2話以降はTikTokで流れてくるのをざっと見てただけだったんですけどね。黒木華の罵倒演技、最高だなーとか感心しながら。最終回を録画して見たら、あまりにも良くて共感しすぎて、さっきHulu加入しました。今週、全話観る。

わたしの作りたい世界が、あのドラマの中にありました。
再びチャレンジしようと思っている「コミュニティ運営」を通じて作りたい世界。

人生で一番ショックを受けた出来事

私がコミュニティ運営に興味を持つようになったきっかけは、2008年に福岡に赴任したとき、ほぼ同じタイミングで仙台に赴任した同僚(30代女性)が自殺してしまうという出来事があったから。

当時、私は35歳。
自分の人生において、これ以上の衝撃は死ぬまでないだろうと、あのとき思ったけれど、やはりいまのところ無い。

「悪い夢を見ているんだろうな」
「あまりにもシャレにならない夢だな」
「いつ夢から醒めるんだろう」

ドラマみたいな経験を初めてしました。

街中を歩いていても、地面に足が着いていない感覚。
フワフワと宙を浮いているようであり、足の届かない水中に引き摺り込まれているようでもあり。

そこまで衝撃を受けたのには、理由がありました。

・彼女を仙台に赴任させるよう、社長に進言したメンバー3人のうちのひとりだった(私が)

・亡くなる前の週に、仕事の相談に乗ってほしいと連絡をもらっていたが、自分の仕事が山場だったため、来週まで待ってほしいと伝えていた

・そうしたら待ってもらえず死んでしまった

誰が彼女を追い詰めたのか

自分も周囲も混乱していた日々のなかで、常に頭の中にあったのが犯人探し。

誰が彼女を追い詰めたのか。

定例ミーティングの場で、売上を作れない彼女を叱責し続けた社長か。

フォローする立場にありながら、彼女を追い詰めるマネジメントをしたマネージャーたちか。

会社の売上を作るために必要だと考え、拠点責任者の配置換え(自分達も含めたシャッフル)を提案した私たちか。

いや、でも、そうは言ったって、他に方法はなかった。
あれがベストな選択だった。
社長の叱責くらい交わせなくて、責任者が務まると思っているのか。
考えが甘すぎるんじゃないか。
あなたの福岡でのミスをこっちは散々フォローさせられているというのに。
責任感なさすぎないか。

彼女を責める気持ちでいっぱいになっていた頃、やけにリアルな夢を見た。

居酒屋の座敷の大きな木目のテーブルに、死んだ彼女と向かい合わせに座っている。会社の飲み会のようだが、みんなは離れたテーブルについている。

「麻子さん、お願いがあるんだけど」
「私が担当していた派遣スタッフに会って、私が亡くなったことをちゃんと話してほしいの」

彼女の言葉に憤りを覚える。

勝手に死んでおいて、なに好き勝手言ってるんだ。
それがどれだけ大変なことか、わたしに負担がかかるか、わかって言ってる?
じゃあ、あんた同じことできる?
厚かましいにも程がある。

腹を立てながら、俯いて話を聞いていた私はハッと気付く。

しまった。
この人はもう死んでいるから、人智を超えた力が使えるはずだ。
責める気持ちを見抜かれているに違いない。
怒らせたらまずい。殺される。

顔を上げた瞬間、目の前の彼女がハリーポッターみたいな稲光を私の心臓めがけて放つ。胸に衝撃を受け、その場に倒れ込む。

ああ、気づくのが遅かった。殺られてしまった。ちくしょう。

目覚めたら、照明が煌々とついた自分の部屋だった。
15年前に見た夢の話を、いまだこれだけ鮮明に語れるってすごいな。

一年間生理が止まる

彼女が夢に出てきたと上司に話したら、願いを叶えてあげてと命じられた。

当時、私は人材派遣の仕事をしており、赴任先の福岡は、亡くなった同僚の転勤前の勤務地で、彼女の地元でもあった。彼女が面倒を見ていた派遣スタッフさんが10数名在籍していた。

スタッフさんたちに彼女が亡くなったことを伝えるのは、新たに福岡の責任者となっていた私の役目だったが、どう伝えればいいかわからず、先延ばしに。

仕方がないやるか。夢で殺されかけたし。

派遣先での業務を終えたスタッフさんに、事務所に来てもらう。
本当は全員集めて一回で終わらせたいけれど、内容的に説明会というわけにもいかないので、当然ながら個別対応。

みんなのリアクションはだいたい同じ。
赴任してきたばかりの支店長に、なんで呼ばれたのかわからないので、恐る恐るやって来る。
思いもしなかった話を聞かされ、驚き、ショックで泣き出す。

その次に押し寄せる感情は、やはり犯人探し。

会社が無理に赴任させて、追い詰めたんじゃないですか?
責任を問う視線と意見。
それらを毎日浴び続けていたらメンタルやられて、そこから1年間、生理が止まった。

告別式を手伝うため、早めに葬儀会場に入り、親族にご挨拶をしたときにも冷たい視線を浴びた。

かろうじて会社が訴えられなかったのは、同僚のお母様が家族を納得させてくれたから。

「本人は転勤をためらっていたけれど、せっかくのチャンスなんだから行ったほうがいいと背中を押したのは私。会社を責めるのはおかしい。」

そう言って、夫と息子と親戚を説得してくれた。

自分も同じだと気づいた

不安定なメンタルを抱える中で、頼れる存在がいないのは私も同じだった。
自ら手を挙げて赴任してきたけれど、縁もゆかりも無い土地で心の拠りどころは無く。
数少ない福岡の知人たちも、忙しくお店を経営していたり、福岡を離れるタイミングだったりして頼れなかった。

まずい。

このままだと、私も死を選ぶかもしれない。

危機感を抱いてようやく、死を選んだ彼女を責める気持ちが薄れ、心境を理解したいと考え始める。

犯人探しが原因追求に変わる。

「だれが」ではなく「なにが」彼女を追い詰めたのか?

見知らぬ土地で、初めて挑戦する仕事と新生活を同時にスタートさせる。
仕事が上手くいかず、社長や上司に皆の前で叱責される。
売上を作れないことへの自己嫌悪。
職場の人たちは自分のことに精一杯で、フォローする余裕はない。

なにがあれば、死を選択せずに済んだのか?

鬱憤と孤独を発散できる場所や相手を見つけられていたら、死を選ばずに済んだかもしれない。

そう結論づけた私は動いた。
自分を殺さないために。

具体的には、福岡の地域版ミクシィみたいなものに登録して、同じように関東から赴任してきていた人と仲良くなり、ふたりで同属性の仲間を集めた小さなコミュニティを作った。

人生折れ線グラフの頂点

そこから一気に巻き返しが始まる。

自分の人生において、いま以上に楽しい時間は、もう二度とやってこないかもしれない。そう思えるくらい毎日が楽しくて充実していた。
仲間と集まっては、朝方まで飲んだくれ、ゲラゲラとくだらない話で笑い転げて声を枯らし、休みの日は九州のあちこちにみんなで遊びに出かけた。

人生の折れ線グラフを描いたら、どん底と頂点が同時にあるのが、福岡で過ごした1年間。

くだらない会話で癒される

その日私は、休日の朝に顧客からクレームで呼びつけられ、福岡の天神から高速バスに乗って、佐賀まで出向いていた。

頭を下げまくり詫びまくりの謝罪対応をして、はあ、やれやれと佐賀駅前から再びバスに乗り、福岡に戻る車内でメッセージが届く。

「さとちゃん、いまどこおると?」
「薬院のモスでお茶してるんだけど来ない?」

福岡に戻り、そのままモスに向かったら、休日モードの友人ふたりが、スーツ姿の私を見てのんびりと言う。

「あれえ?さとちゃん休みの日に仕事だったの?え、朝から佐賀まで行ってたの?おつかれ〜」

「それより聞いてよ〜、まなさんが変なサングラスしてて〜」

友人がかけているサングラスが、大門刑事(渡哲也)のようだと言って、ゲラゲラ笑い転げている友人たち。

いや、もうちょっと私に興味持ってもよくない?
なんで休みの日にスーツ着て佐賀まで行く羽目になったのか、聞いてくれてもよくない?

大門サングラスとか、まじでどうでもいい。
くだらない。くだらなすぎる。くだらなすぎて平和だ。

ほんの数時間前、呼びつけられた佐賀の家電量販店で、派遣スタッフへのクレームで詰められていたのが先週のことのように思えるくらい、薬院モスの空間はくだらなすぎて平和だった。

くだらない会話が人を癒す。そんなことがある。たくさんたくさんある。

だれかの居場所づくり

現在の私には、癒しの趣味がいくつかある。

なんのために上達する必要があるのか?
やってる本人すら目指すゴールがさっぱりわからないテニス。

ジャニーズグループ(SixTONES)の推し活。
東京ドームのライブに当選したときは大いに動揺した。「嬉しい」と「信じられない」が同時にやってくると、胸が痛くなるのだと初めて知った。狭心症?救心飲まないと。

どちらの趣味にも「仲間」と「他愛もない会話」が、もれなくセットで付いてくる。

利害関係ゼロの人たちとの会話が、仕事で張り詰めた頭と心を癒す。
生きていく上でのさまざまな不安を吹き飛ばす。

私の人生における命題は、だれかの居場所づくりだと思っている。
重ねてきた経験はきっとそのためだ。

4月から某オンラインサロンの運営人事部でサロン運営に携わることになった。
自分自身のオンラインコミュニティやご近所コミュニティも、同時進行でカタチにしていきたい。

これを読んで共感してくれた人が、ちょこっと手を貸してくれたら嬉しい。

satochan


[この記事を書いた人]さとちゃん(SATO-CHAN)

1973年早生まれ ウェブまわり仕事のフリーランス、ブロガー
オーシャンビューな部屋で猫とふたり暮らし
性格→意地悪
茅ヶ崎カーストについて赤裸々に書きすぎて炎上したブログはこちら
https://ouchigohan.club/chigasaki/3121

◆コラムの感想やコラムニストへのメッセージはウナタレ 「友の会」コラムニストの部屋にて。
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