卒婚とかエア離婚とかって綺麗な言葉じゃすまなかった話ばかり集めてみました
敬老の日に華々しく開催されたウナタレイヴェントにお越しくださったみなさま、ありがとうございました。オンラインでご参加くださった方、その後に配信された音声コンテンツをお聞きくださったみなさまにも改めましてお礼申し上げます!いや〜かなり刺激的で実践的で示唆に富む内容だったのではないでしょうか。
特に卒婚のトピックは盛り上がりましたね〜。コラムにストゆりこさんの爆弾発言ありましたし。私も卒婚をリアルにやってみて、ヤバかった話をほんのちょっと触りだけ発言しちゃったのですが、その反響があまりに大きくて、こうやってついに3回、3人分の「卒婚とかエア離婚とか綺麗な言葉じゃ済まなかった現実の話」を、いつものように前のめりで鼻息荒く、そして若干の冷静さと持ってお伝えしちゃいたく存じます。
第一回は題して「エア離婚の落とし穴と離婚しない言い訳」の話です。
元TBSのアナウンサーの小島慶子さんが提唱されていた「エア離婚」っていう言葉ご存知の方も多いと思います。いいですね〜なんかふんわりしていて。離婚届は出さないけど、子供たちが巣立ったら離婚することで合意していて、オーストリアと日本に分かれて住んでいて、小島さんが一家の家計を担っているという状況。この状態を法律的には何も変えずに「気分だけ離婚した感」を味わっていらっしゃるとか。うん。つまりは「いつか離婚するって前提の別居」ですね。とは言え、夫にはある程度の情もあるし、子供達の親として信頼もしていると。だからすぐに離婚はしない、と。ただ、もう離婚に合意はあるからなんとなく自由な気分を味わえるという良いところ取りのふんわりしたイメージがマッチしている「エア離婚」なわけです。
なんなら、エアだとしたって離婚には合意しているんだから、どちらかに恋人ができようが、下半身フリーな行動をしようがとやかく言わないし言えないという状況でもあるわけで。いいですね〜今のところメリットしかない気がしますよね。だから、この考え方になんか憧れる人が出てきちゃうんですよね。いいな〜自由で〜。妻のまま自由で〜。夫だけど自由だ〜。でもそれ、ほんとに大丈夫?と思いませんか?
人様の家庭ですから、これがいい、これが今のところ最適の選択というのであれば、周りがとやかくいうことでもありません。法律上はまだ妻であり、夫だしね。
ただ、これだけは「やってみた」側の私からいわせていただくと、「人の心は結構簡単に変わる」という事実があり、そこに大きな不安要素、マイナス側面、リスクがあるんです。
仮にエア離婚した状態で、あと5、6年は子供のために法律上はこのままにしましょうねという合意があったとしても、どちらかに本気の恋人ができたりしたらどうでしょう。夫のほうに新しい関係を築いた人がいて、なんならほとんどそっちで暮らす様にもなったりして、さらには向こうに子供ができちゃったりして。
そんな時に「いやいや、妻は私ですから、約束どおりうちの子が独り立ちするまで離婚しませんよ?」と言ってみたところで、そんなことは先方に飲んでもらえずに結果離婚裁判ということになります。そして裁判でいくらもがいても、客観的に夫婦関係は破綻していましたよね、長いことね、しかもそもそもそのうち離婚するって合意あったんでしょ?なんならその時の会話の録音もLINEも証拠として提出されてますよ。セックスもなかったでしょ?それもう夫婦じゃないですよね。離婚成立ね。はい終了〜〜〜〜〜。ぴー。(試合終了のホイッスル)
ああ、怖いわ。いやいや、法律上の妻は私!といくら裁判で憤慨していても、「エア離婚したの〜」だのといいまくり、「夫とはいい感じの別居なの〜自由で幸せ〜責任ないし〜」とか言っていたあなたに味方してくれる裁判官はいません(いなかった)。
これまでの判例でも別居して5年程度で「客観的に夫婦とは認められない」なんて言われるんですよ。エア離婚なだけで夫婦でしたと言ってみたところで、「え?最後のセックスいつでした?それどっちが誘いましたか?」とか言いたくもないことを聞かれた上に、ルナルナアプリ(生理周期管理アプリ)のハートーマーク(セックスした日の記録)を証拠として出す羽目になるんですよ(私じゃないけど実話)
もちろん、法律上の妻の権利はあるので財産分与などで相応のものは法律的な権利分のなにかしらはあります。だけど、すでにその共有財産が使い込まれてなかったり、自分の子供の養育費もらうだけで精一杯だったり。なおかつ夫の両親名義の土地の上に、夫名義で建てた家がいつのまにか夫の新しい恋人が買い上げていて、元妻の自分も子供も住み続けられなかったり(友人の実話)と、「妻だから持っていた権利」といってもそこはもう儚いものなんです。夫婦で住んでいたら、夫の実家両親と交流していたら、気がついたはずのことだったりします。夫の両親からも離れられてエア離婚気分満喫〜と楽しんでいたのは自分だけだったという。こうして、本来妻だったら持っていたはずのあれこれは、はらはらと手のひらの指の間から落ちていくんですわ。
それもこれも「いつか離婚しようね」という“合意”ができていたからです。もう離婚したくないなんて、その時点で言えない状況を自分でしっかり作っていたということになります。自分が自分の思う様にいいところ取りをしてみたって、法律はそう甘くないし、裁判官はもっと甘くないのです。
あなたは聞かれます。
「離婚の意思があったけど、そのままにしていただけですよね?」と。
ウナタレイヴェントでコラムにストのゆりこさんは言ってました。「結婚を続けるって覚悟がいるのよ」と。その覚悟が揺らいでしまったことを認めずに、やれ卒婚だ、エア離婚だと、言葉のキャッチーさに惹かれてそれを選択してしまう危うさを感じます。自分の思うように他人は動いてくれないし、自分が思う様にだけいい塩梅になんでも進んでいくわけでもないんです。エアができるのは小島慶子さんご自身が一家の主たる稼ぎ主だからということも大きな要因だと思います。すぐに自立できるからこそリスクをとれるし、心に沿った言葉を選んで、自らの立ち位置を決められている。大きなアドバンテージは彼女自身が持っているからこそです。
では、一般的な共稼ぎ夫婦や専業主婦の場合はどうすればいいでしょう。経済的な理由や親のこと、子供のことですっぱり離婚という選択肢を取れない事情はいくらでもあります。次回はそんな「今すぐ離婚はやっぱり無理かも」な人がとった選択肢をご紹介します。
[この記事を書いた人]渋谷 ゆう子
香川県出身。大妻女子大学文学部卒。株式会社ノモス代表取締役。音楽プロデューサー。文筆家。クラシック音楽を中心とした音源制作のほか、音響メーカーのコンサルティング、ラジオ出演等を行う。音楽誌オーディオ雑誌に寄稿多数。
プライベートでは離婚歴2回、父親の違う二男一女を育てる年季の入ったシングルマザー。上の二人は成人しているが、小学生の末子もいる現役子育て世代。目下の悩みは“命の母”の辞め時。更年期を生きる友人たちとワインを飲みながらの情報交換が生き甲斐である。
著書に『ウィーン・フィルの哲学〜至高の楽団はなぜ経営母体を持たないのか』(NHK出版)、『名曲の裏側: クラシック音楽家のヤバすぎる人生 』(ポプラ新書 )がある。
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