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ヒーローになれなかった男が教えてくれたこと

ウナタレ世代ともなると、人生のターニングポイントって、一つや二つあるはず。結婚や出産、親の介護など、さまざまな道を試行錯誤しながら歩んで来たからこそ今がある。苦労も涙も喜びも全て、ウナタレとして熟成させているわけですよね。水戸黄門の曲が流れるわぁ〜。人生楽ありゃ苦もあるさ。

そんなターニングポイント、ワタシの場合、やはり「推し」ができたことも外せない!猫にまたたび、ヲタクにフィギュア、ワタクシ伏見はコージサマ、という三段逆スライド方式(って何?ウナタレ世代はご存知の○トヤでお馴染み。あれ?関東の方しかご存知ない?)で、介護が終わって何をしたいいかわからなくなっていたワタシは、吉川晃司サマの出現により、元気になって生きていく張り合いが出てきたのですわ。

そしてなんと!今年2024年は、吉川晃司サマデビュー40周年!!パチパチパチパチ!

と、まあ、ここで盛り上がっているのはワタクシだけかもしれませんが、コージサマにとってもファンにとっても節目の年なのですわ。日本人は節目がお好き。成人式ならもう2回目の40周年。それならば、全国ツアーもガンガンとぉ〜!と思ってみるに、なかなかお知らせが来ず、ツアーは10月からとなり…そんなガックリと肩を落としていたファンに、とんでもないお知らせが飛び込んで来たのでした!

5月にCOMPLEX再結成!ヒャー!

COMPLEXといえば、もと元BOØWYの布袋寅泰氏とコージサマの伝説のロックユニット。そして2年で活動休止。しかしその21年後の2011年に東日本大震災の復興を願い、2日間だけCOMPLEXが再結成。収益金を全て寄付。それが、能登半島地震の被災した方々の復興を願って13年ぶりに再結成!胸も高まるけれど、でもその影には、コージサマの人生を変えるほどの大きなターニングポイントがあったのでした。




ヒーローになれなかった男


そんなコージサマの人生の分岐点、それは東日本大震災の時のボランティアに遡ります。もともとボランティア団体に所属していたコージサマ。この時にはその団体の方々と軽トラで震災後すぐに現地に行き、自転車のパンク修理などをしていたそうで。その時、ボランティア団体の方から、とにかく現地の方々と話すように、沈黙を作らないようにと言われていました。そんな時、自転車の修理に来た親子に、コージ様は何気なく話しかけたのでした。

「仮面ライダー好き?」

すると、その子のお母さんが話した言葉にコージサマは打ちのめされたのでした。「仮面ライダーはお父さんを助けてくれなかった、と言って嫌いになってしまったのです」

その場所は石巻市。仮面ライダーを産んだ漫画家の石ノ森章太郎氏の記念館があるところ。コージサマは小さな時から仮面ライダーの大ファンで、実は、40過ぎてから仮面ライダーとなる夢を叶えたのでした。仮面ライダーWで主演が若き日の菅田将暉。コージサマは仮面ライダースカルの役どころでした。


津波が来てもお父さんを助けてくれなかった仮面ライダー。コージサマはその時、自分の無力さをまじまじと見せつけられ、動けなくなったんだとか…念願の仮面ライダーになったけれど、ヒーローになれたわけではなかった。何もできない自分…。驕り高ぶっていた自分…。


人に歴史あり


実はこの話は、10年以上前に「ヒーローになれなかった日」というドキュメンタリー番組で語ったことです。だからファンなら知っている話。


でも、昨年、テレビでまたこの話をした時に、コージサマの目から涙が溢れていました。たとえその後もずっと支援を続けていても、コンサートで何億円と寄付をしたとしても、未だ後悔の念が成仏していないことを、あの時の辛い思いがまだ心の中にあることをファンたちは知ったのでした。


その後、ボランティアから帰ってきてすぐ、コージサマは入籍したのです。子供もいたのに結婚しなかったのは、子供の泣き声の中でロックなんて作れないという思いから。でも、そのボランティアでの体験や思いが人との繋がり、家族の大切さなど、価値観がすっかり変わったといいます。


それからでしょうか、なんだかヤンチャだったコージサマが落ち着いてきたのは。女の子のパパなんですよね、実は。


ガンガンと歩んで来て、とんがりまくっていた若き日のコージサマは、今や少しずつ丸くなってきているのを感じている人も多いかと。それは、歳をとったこともあるけれど、そんな辛い体験に裏打ちされた思いがあるから。振り切るところまで振り切った後は、大きく切り替えられるのでしょう。あの時の後悔の気持ちは胸に残しながら…。

って、コージサマの歴史を長々と話してしまいましたが、こんなに大きなターニングポイントでなくても、ウナタレ世代、さまざまあるもの。まあ、コージサマも男性版ウナタレ世代だし。


そんな色んな人生を歩んで来た経験ゆえに、わたしたちはたとえ身体にガタが来ていても、歳をとりながらも、ココロはある意味進化している、悟りの境地?に少しずつ近づいてると思うのです。だって、悟りの第一段階は、煩悩に気づくこと。ターニングポイントが来るたびに、自分と向かい合って煩悩を知る…。それをコージサマの涙が教えてくれた気がするのでした。

というわけで、まだまだ物欲に塗れた煩悩だらけのワタクシですが(安心してください、自覚してますよ)、見事当選したCOMPLEXのコンサート、2日間楽しんでまいりますわ。ビーマイベイベー。


[この記事を書いた人]伏見美帆子

ブロガー。 「文字つづりすと」という肩書きを勝手につけてつぶやく日々。 時々、その人のための物語を書くサービスをしている専業主婦。 14年にも渡った介護生活では、推しの存在が支えとなった。アロマとお香とアートも好き。 1967年生まれ。

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