ワンオペの恨みはコワイのよ
友だちが落ち込んでいたので理由を聞くと、長年家族ぐるみで付き合ってきた2組の夫婦が離婚の危機なのだといいます。
どちらも50代で、離婚を考えているのはいずれも妻の方。夫は妻の気持ちにはまったく気づいていない様子です。
よくよく話を聞くと、不満の発端は夫が子育てに協力的でなかったことらしい。
子育てがワンオペなら、家事だって手伝ってくれなかったはず。つまり家庭の中で役割を果たそうという気持ちがなかったってことです。
そういう長年の不満が積もり積もって熟年離婚を考えているということのようです。
その気持ち、わかるわぁ。うちも元夫はまったく子育てに協力的ではなく、完全にワンオペで母子家庭のようだったから。
一緒に家庭を育もうという態度が見られなかったよね。
典型的な「ジャパニーズ・ビジネスマン」だったので、仕事をしてお金を運んでくることだけが夫の役割だと勘違いしていたのだと思う。
確かに彼は忙しい人だったのですが、休みの日は寝てばかりで子どもたちと遊ぶこともなかったし、連休は大抵仕事だったので家族旅行も諦めるようになりました。
期待して裏切られるのが嫌で期待もしなくなった。ディズニーランドに2回行ったのは奇跡だわ。
そうなるとですね、どんどん気持ちが離れていきます。
恨みはしないけど、どうでもいい存在になります。いないものとして考えるようになる。ゴーストですね。
関心がなさすぎて不倫にも気づかなかったし、知っても1ミリも感情が動かなかった。それほど無関心な存在になっていたのです。
冒頭の友だちの話に戻ると、夫は2年後に定年になったら夫婦で旅行に行くつもりでいるらしい。なんて能天気なんだ。
夫がいるのにワンオペで子育てをした女性の心の奥底には、澱のように積もった何かがあると思う。
子育てって大変ですよ。ひとりで悩みを抱え、困っても夫に頼ることができないのはとても悲しいことだったのよ。
悲しみは怒りに変わり、怒りは私のように無関心へと変わるか、憎しみに変わるかという感じじゃないかな。男たちはそれがわかってないのよね。
妻には妻の人生があります。何十年もほったらかされていたら、夫なして自分をご機嫌にする方法を見つけるに決まってるじゃないね。
この春社会人になる娘ちゃんは、「ママ、私のために我慢させてごめんね」と言っているとか。知らないのは夫だけ。突然離婚を切り出されたら、夫はどういう顔をするのだろう。
結局のところ、結婚というシステムでは何も保障されていないのです。
紙きれ1枚のことなのだから、相手を気遣う日々の小さな努力がなければ簡単に壊れてしまう。
お互いさまなんだけどさ、夫たちは熟年離婚されないように気をつけた方がいいと思う。
[この記事を書いた人]やまざき ゆりこ
娘2人がまだ幼い30代前半のときに在宅ワークができるという理由でコピーライターになる。同時期に、伯母の勧めで書と墨絵を始め、以来文章を書くことと絵を描くことがライフワークに。6年前、思いつきで始めた日本画で色の世界にハマり、コロナ禍のおうち時間に身近な動物を描いていたらいつの間にかペットの肖像画家に。57歳で熟年離婚。現在はフリーペーパーのコピーライターをしながら、オーダー絵画の制作に勤しんでいる。着物好き、アート好き、美しいものが好きな1957年生まれ。
◆コラムの感想やコラムニストへのメッセージはウナタレ 「友の会」コラムニストの部屋にて。
わかる、わかる!とコラムを読んで共感したあなた、友の会でお待ちしております。
コラムニストの部屋
https://tomonokai.unatale.com/category/columnist/