恩を送る人
小学校の花壇ボランティアをやっています。
一番下の娘が小学校を卒業する年に、「小学校にもっと花があったらいいのに」と思い、当時のガーデニングサークルの会員さんたちと花を植え始めたのがきっかけです。
卒業式に子どもたちを送るために、入学式に子どもたちを迎えるために、花壇に春の花がたくさん咲いていたらいいな、そんな想いで活動して今年で7年目になります。
活動と言っても、定期的に集まって何かするわけでもなく、来れる人が来れる時に集まって草むしりをしたり水やりをしたり、季節の花の種や球根を植えたり。5~6人集まる日もあれば1~2人の時もあり。
大きな活動は年に2回、春先の卒業式入学式に合わせて春の花を植えることと、春の花が終わるタイミングで今度は秋の花を植えること。真冬の時期以外、どこかに何かの花が咲いていたらいいな、そんなゆるい感じで活動しています。
今年のゴールデンウィークも、特に出かける予定もなく、暑くもなく寒くもなく爽やかな5月の日に2時間だけと決めて花壇を耕しに行ってきました。
どこかから予算が下りるわけでもなく、学校で種や球根の寄付を募ったり、ご近所さんに苗をいただいたり、時期が過ぎてお安くなった苗を買ってきたり、いろいろ試してみてうまくいったものもあれば上手に育たなかったものもあり試行錯誤しながらの日々です。
メンバーも忙しかったりで、なかなか人手が集まらなかったりもするし、1人黙々と作業する日もあります。植物相手のこと、お天気にも左右されます。きっと思い通りにならないことの方が多いのです。それでも仕事の隙間を見つけては学校の花壇に通うのは、きっとこんな光景が見たいから。
3月ごろに植えたナデシコの花です。花が2~3個ついているくらいの終わりかけの苗を廉価で買ってきて植えたのが、こんなにたくさん花を咲かせていました。その他にも、春にはたくさんの花が咲いてくれて、毎年その姿を見ては「今年もきれいな花をつけてくれてありがとう」という気持ちと同時に、「うちらがんばったね!」と自分たちを褒めたたえるのです。
花が咲いたときの喜びは寒い冬を乗り越えてくれた植物たちへの喜びでもあり、自分たちの活動が実ったことへの喜びでもあり、もしかしたら自己満足かもしれません。でも、花壇で何か作業していると、休み時間の子どもたちが興味を示して声をかけてくれたり、先生たちが挨拶してくれたり、7年もやっていると学校でも私たちの活動を応援してくれるようになり、植物好きの先生が一緒に活動してくれたり、その輪は確実に広がっているなと感じるのです。
最近「恩送り」という言葉を知る機会がありました。
誰かに親切にしていただいたりお世話になった時、その恩をその人に返す「恩返し」ではなく、違う誰かにバトンを渡すように恩を受け渡していく、それが「恩送り」です。
子どもが小さいころ、小学生がいる現役のお母さん時代ってみんな子育てに家事に仕事に忙しくて、実はそんなに学校に関わっていられないんじゃないかと思うのです。授業参観や運動会などの学校行事には来るけど、PTAなどのいわゆるボランティア活動にはなかなか参加しづらいと思うのです。
PTAが必要か否かの議論は定期的に上がってくる話題だし、古い体制のまま継続している組織が今の時代に合っているのか?いろんなことを父兄の善意に頼っていること自体学校運営として成り立っていないのでは?と様々なご意見があると思います。
それは置いておいて、私自身もこうして学校に花壇ボランティアとして関わるようになったのは一番下の娘が卒業してからです。子育てに手がかからなくなってやっと、お世話になった小学校に少しご恩返しが出来たらなと考えられるようになったのです。それは心と時間にちょっとだけ余裕が出来たからかもしれません。
上の子たちは違う小学校だったけれど、最初の子から合わせたら小中合わせて20数年もお世話になった地元の学校に、地域の住民として少しでも関わっていけたらいいなと思ったのです。
学校のことに関わるのはどうしても自分のお子さんが在学中になってしまうとは思うけれど、すぐその場でご恩返しが出来なくても、もっと大きな意味で学校や地域や、今まで自分と家族が関わってきた世界に恩を送る、お世話になったお礼のバトンを次の世代に受け渡していく、それが続いていったら、そんな気持ちの人がたくさん現れたら、世の中はとても平和で優しくて美しい世界になるのではないでしょうか。季節ごとに花が咲く、それを見て誰かの心が少し和んでくれる。花を見て「きれい」と思う心がきっと1番きれいなんだと思います。
私たちの小さな活動がこの「恩送り」になればいいなと思うし、自分自身いろんなところで恩を送れる人になりたいなと考える今日この頃なのです。
[この記事を書いた人]sachi
片づけアドバイザー 今年還暦を迎えたタイミングで4人目の子育てと母の介護から卒業。 やっと戻ってきた自分の時間に、好きなことやりたいことを模索する日々。 好奇心の赴くままに行動する日常をお届けします。