本気を出したらこうなった
「意識が物事を動かす」とはよく言われることだけど、実際に体験してみると驚くほど世界が変わることを実感する。いやぁ、こんなに劇的に変わるとは思ってなかった。
先月、5年ぶりに個展を開いた。これまでも毎年展覧会はしていたのだけど、2021年に銀座で初個展を開いて以来、毎年の展覧会はずっと二人展ばかりだった。二人展はそれぞれのエネルギーが交差するところが面白くもあるし、誰かと一緒にやるのは毎日在廊しなくて済むメリットもある。仕事を持っている身としては、会期中ずっと仕事を休むのはちょっと気がひけるところがあるから。それに友だちと一緒にやるのは楽しいしね。つまり今まではお楽しみの範疇を出ていなかったのだ。
私はペットの肖像画をメインに描いているので、展覧会は見本市みたいな位置づけとして捉えていた。「こんな絵を描くんです」ということを実際に見ていただき、その後肖像画の注文をいただけばいいと思っていたので、展覧会はショールームであり展示している絵は売れなくてもいいと思っていたのだ。売ることを前提にした絵も描いていなかった。

でも今年は本気を出そうと思った。思えば私は今までの人生で本気を出したことがないのだ。器用なのをいいことに、自分が持ち合わせているものだけで結構面白おかしく生きてきてしまったので、本気になって何かに取り組んだことはないのである。でも、一生に一度くらい本気を出さなくては、このまま何もせずに死んじゃう。だから個展。
本気じゃなかったから、これまでは人の力を借りることは考えていなかった。たとえば私の9歳年上の従兄は平凡出版時代のマガジンハウスにカメラマンとして入社し、長年芸能担当として働いていた。だから今でもお付き合いのある芸能人が何人かいるのである。その中の2人が岩崎宏美さんと松本伊代さん。有名人のペットの絵を描けば、それが1つの宣伝文句になるとは思っていたけど、今まではそこにフォーカスしていなかった。
でも今年は本気を出すと決めたのだ。だから、なりふり構わず思い切って従兄に「紹介して」と頼んだ。するとあっさりと紹介してくれてお二人のワンちゃんたちを描かせていただくことができた。おまけに岩崎宏美さんは個展に来てくれるというではないか。やったね。
個展なのだからしっかりとしたテーマが欲しい。それで、「犬と猫と赤い薔薇と」とした。普段ペットを描かせていただくときは赤い薔薇を描くことはないんだけど、動物たちと合わせて赤い薔薇をたくさん描いた。初めて動物なしの薔薇だけの絵も描いた。「イタズラわんこシリーズ」も描いた。来てくれた人がインスタをフォローしてくれるように、QRコードを印刷したパネルを4箇所に置いたり、去年認定された「芸術の星」の認定証のコピーと説明書きも壁に貼った。ポストカードもたくさん作った。外国人観光客向けに英文のカードも作った。赤い薔薇の花を買って会場に飾った。つまりプロ意識を持って完成度を上げたのだ。さあ、絵を売るよ。

さて、個展初日。自分の作品だけで埋め尽くされた個展会場は今までとは全然違うエネルギーだった。自分の家を飾るのと同じ感覚で整えた空間は、隅々まで自分色で気持ちいいったらない。来てくれた人たちもエネルギーが全然違うと言ってくれた。ああ、個展はいろいろ大変なこともあるけど、やっぱり人と混ざらないのがいい。初日には岩崎宏美さんから特大のゴージャスなお花が届いた。こんなすごいお花は生まれて初めていただいたわ。
するとどうなったかというと、今までとは比べ物にならないほど絵が売れたのだ。いつもの3倍くらい。初めてお会いしたご夫婦が絵を買ってくださったり、新築の家に飾るためと言って旧作の大きい絵を買ってくださった人がいたり、事務所開設のための絵を描いて欲しいと頼まれたり、ほかにも数件。たくさん作ったポストカードは種類によって完売するものもあった。おかげさまで2度目の個展は大成功だった。ホント、意識が変わるとここまで変わるものか。
さらに、「夢はパリの個展」なんて言っていたら、パリで展覧会をやっている人を紹介されたり、ニューヨークで日本人アーティストのグループ展をやっている人を紹介されたり、「夢」と思っていたものはその気になればすぐにでも手に入る現実になった。意識ってすごい。そして口に出すことは大事。口に出すことで誰かが運んできてくれる。夢は自分の中に閉じ込めていたのではそこから出られないのだ。いやぁ、なんだか凄いことになってきたわ。
ところが、展覧会終了の翌日、意識が変わり私が本気になったために奈落の底に落とされたような恐ろしいことも起きたのだ。その話はまた別の機会に。

[この記事を書いた人]やまざき ゆりこ
娘2人がまだ幼い30代前半のときに在宅ワークができるという理由でコピーライターになる。同時期に、伯母の勧めで書と墨絵を始め、以来文章を書くことと絵を描くことがライフワークに。6年前、思いつきで始めた日本画で色の世界にハマり、コロナ禍のおうち時間に身近な動物を描いていたらいつの間にかペットの肖像画家に。57歳で熟年離婚。現在はフリーペーパーのコピーライターをしながら、オーダー絵画の制作に勤しんでいる。着物好き、アート好き、美しいものが好きな1957年生まれ。

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