女の性欲
私がまだ40代だった頃、当時60代前半のある女性が力を込めて語った印象的な言葉がありました。「男は女にも性欲があるということを分かっていない」。当時私は結婚していたけど、夫とは長い間レスだったし、そもそもそういうことに興味もなかったから、60代の女性のその言葉はある意味衝撃でした。
彼女は同い年の夫が50歳頃からまったく自分を求めてこなくなったことを「バカにしている」と怒っていました。彼女は今でも十分チャーミングなのです。美しくあり続ける努力も怠っていないから、その気になればモテると思う。それなのに自分を女として扱わない夫に不満を持っていて「私、自分を勿体ないと思うのよね」と。確かに勿体ない。
当時は「60代でも性欲ってあるんだなぁ」とぼんやり思っていたのですが、私も3年前までは彼氏がいて、毎週昼下がりの情事を楽しんでおりましたので、今ならわかる。でも、今でも性欲って何だかよくわからないのよねえ。好きな人と合体したくなることを性欲と呼ぶならそれはあったんだけど、肉体の欲求というよりもレクリエーション的要素が大きかったからなぁ。
振り返ると、若い頃は男性の欲求に応じていただけだった気がする。熱烈に誰かを好きになると「この人とひとつになりたい」という欲求は生まれるんだけど、それは最初だけで、あとは相手の欲望のペースに合わせている感じで、自分からしたいと思ったことはなかったし、ムラムラしたことも記憶にない。だから子どもが生まれた後は私が拒否してレス気味になり、40代ではほぼ皆無という感じになりました。まあ、夫も浮気したくなるよね。笑
それが一変したのは50代です。別居した52歳の時に「フリーになったからには恋愛するぞー!」と一念発起したのがきっかけ。何人かと会った後に元カレと出会って、その後6年半付き合ったわけだけど、合体のレクリエーションは楽しくて大好きでした。別に彼が特別テクニシャンだったわけではなく、むしろサービス精神も足りなかったけど、それでも楽しかったのは誰もいない場所でのびのびと、対話しながらエンジョイできたからだと思う。
50代って微妙で、更年期を迎えて「もう若くない」と諦めたくなる年頃なのかもしれない。でも違うのよ。あらゆる意味で女は50代からが楽しいと思う、絶対に。そして大人の合体ほど楽しいことはない。若い頃みたいに妊娠の心配もしなくていいし、オールフリーなんだから、のびのびと快楽を追求できる。絶頂があってもなくても楽しい。
それにカラダを触れ合うことでのみ生まれるものが確かにあるのです。女性の欲望は単に肉体の欲求というだけではなく、女として扱われたいという気持ちだったりするし、あのエネルギーの交換はほかのどんなものも代わりにはならない特別なものです。なので、今でもまた恋愛をしたら張り切って合体したいと思う。そうだ、これ以上BBAにならないうちに新しいフランス人を見つけなくては。笑
[この記事を書いた人]やまざき ゆりこ
娘2人がまだ幼い30代前半のときに在宅ワークができるという理由でコピーライターになる。同時期に、伯母の勧めで書と墨絵を始め、以来文章を書くことと絵を描くことがライフワークに。6年前、思いつきで始めた日本画で色の世界にハマり、コロナ禍のおうち時間に身近な動物を描いていたらいつの間にかペットの肖像画家に。57歳で熟年離婚。現在はフリーペーパーのコピーライターをしながら、オーダー絵画の制作に勤しんでいる。着物好き、アート好き、美しいものが好きな1957年生まれ。
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