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血の道症

ようこそ“血の道症”へ

ウナタレマダムの皆さま、はじめまして。松本恵理子と申します。

私は、これまで看護師として約30年臨床現場に立ち、現在は公認心理師としても、年間約300症例のカウンセリングを行っておりますが、支援法人設立のきっかけは自身の乳がんの闘病経験でした。

この乳がんの闘病経験は まさに血の道症(ちのみちしょう)の、ど真ん中の状態であると感じており、毎回ウナタレを拝読するうちに、血の道症の意味をみなさんと共有出来たらという思いが沸き上がり勇気を出して今回、ペンをとりました。

ところで、みなさまは、「血の道症」という言葉を耳にしたことはありますでしょうか?

私は幼少の頃から祖母と同居しており祖母は【中将湯(ちゅうじょうとう)】という漢方薬を毎日飲んでおり、あの独特の香りが、我が家に一日中漂っていたことを今でも思い出します。

そしてその頃視聴していたテレビドラマの「大岡越前」の竹脇無我さん演じる、榊原伊織の勤務する小石川養生所でもきっと、こんな煎じ薬の匂いがするのだろうなと勝手に想像をしていました。(笑)

祖母は常々、女は血の道症になるのだから、この中将湯を毎日飲んで、体を冷やさないことが大切なのだと言い聞かされ、良薬は口に苦しを、体感しながら育ちました。

子供の頃は“チノミチショウ”というなんともおどろおどろしい響きが、不気味に感じていましたが、年を重ね実際に血の道症を経験してみると、確かに得体のしれない心身の症状に踊らされる経験を味わいました。

*血の道症とは月経、出産、産後、更年期など女性ホルモンの変動に伴って現れる精神不安や苛立ちなどの精神神経症状、および身体症状をいいます。

私の場合の血の道症は乳がんの治療のための、ホルモン療法によって現れました。乳がんの標準治療は通常は手術、化学療法、放射線療法、ホルモン療法を病態に応じ選択します。

中でもホルモン療法は乳がんの元凶である、女性ホルモンを枯渇させ根絶やしにして再発を防ぐという治療です。

私の母親も乳がんの患者でしたが、当時は患部を大きく切除することが、治療の主幹でしたが、現在は全身のコントロールをしながら、がんの再発を防ぐことが、一般的な治療の流れとなっています。

その全身のコントロールが必要であっても、実際はそもそも女性の体も自然の四季と同じように、春夏秋冬の様に緩徐に変化していくものが、ホルモン療法を行うと突然、体が冬の状態になってしまうような感覚でした。

その時の症状は激しいホットフラッシュ(乗り物や屋内で突然大汗をかくため、冬でもダウンジャケットの下は半袖の衣服でした)、全身の関節痛(毎朝産まれたての小鹿の様にふらつきながら起き上がる)、また拭っても拭っても、纏わりつくマイナス感情がとても辛く感じました。

この症状が短期間に急激に現れしんどいため、様々な治療や補助療法も試しましたが、ヒットした感覚はなく、主治医も相談しても「女体の神秘」という言葉を繰り返していましたから、これは自分でリカバーする以外に道はないと感じていました。

その結果私は血の道に向き合う方法とはこのようなことだと感じています。

1 不快な症状はいつか必ず改善すると信じること(自分を信じる)

2 祖母が話したいたように血の道症は女性がだれでも通る道であること

3 この際自分の生き方、考え方を変えるトリガーとしてみること

4 ウナタレのようなピアサポートとつながること

(同じ悩みを持つ人同士で支えあう活動)

5 一個人の体験談や有名人の発信情報に踊らされず、エビデンスのある発信を選択すること

これからは、血の道症による得体の知れない症状に、怯えたり、気持ちの落ち着きどころがなくても大丈夫ですよ。

夜明けの前が一番暗いように、血の道症になんとなく向き合っていこうかという思いがあれば、今が闇の中であると感じていても、きっといずれ心身の夜明けはやってきますから。

松本恵理子


[この記事を書いた人]松本恵理子(Eriko Matsumoto)

一般社団法人乳がんしあわせ相談所 代表理事
看護師 公認心理師
1967年横浜市生まれ 聖マリアンナ医科大学看護専門学校卒業

子供の頃、キャンディキャンディキャンディを夢見て看護師を目指す。結婚後は早々に主婦になる事を目指すも、命の現場の臨場感にたまらなく心がひかれ、気がつけば30年以上ナース生活を送っている。
9年前の乳がんの闘病経験から、自分にはまだ残された役割があると感じ、がん患者さんとご家族のための支援法人を設立。
趣味は資格取得と猫を愛でる事。小型船舶一級資格を活かし、渡し船の船長になることを目論んでいる。

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