料理好きだと勘違いしてた
まだ私に家庭らしいものがあった頃、私は自分が料理好きだと思っていました。子どもにはちゃんとしたものを食べさせなくてはならないから、栄養バランスを考えていたし、調味料の類は自然食品の店で買っていました。お味噌も梅干しもラッキョウも毎年漬けていたし。メニューは和食が中心でしたが中華料理もよく作ったし、何しろ頑張ってたよね。
元々器が好きだったので、作り付けの棚にはぎっしりと器が入っていました。古伊万里から作家ものの器まで、文字通り売るほど持ってた。その器に料理を盛り付けるのが好きだったのです。子どもたちは離乳食も古伊万里で食べてたしね。
友だちを呼んでパーティーを開く時には毎回10品くらい作って、人が飲んだり食べたりするのを見るのをウキウキと眺めていました。
だから私は自分が料理好きなのだと思ってた。ところが、これは大きな勘違いだったんですね。ひとり暮らしを始めてわかったんだけど、私は料理を作るのが好きなのではなくて、「人に食べさせること」が好きだったのです。自分が作った料理を人が食べているのを見るのが好きだったのよ。
毎週彼氏が来ていた頃は、彼に食べさせるためにせっせと作っていましたが、それもなくなって堕落の一途。自分に食べさせることにはまったく興味が持てず、普段はRF1などデパ地下のお惣菜が大親友。
よほど気が向いたとき以外は凝った料理なんか作らず、友だちが来るときだけ張り切って作るという感じです。なので誰も来なくなったら栄養失調になっちゃうと思う。
売るほどあった器は、今の家に引っ越すときに半分くらい友だちに譲ったけど、それでもまだ結構な量があります。でも普段使うのはほんの一部。
もう器は増やすまいと思っているけど、カトラリー類はヤバイです。先日もフランスのアンティークのサラダ用サーバーを買ってしまいまして。アンティークのカトラリー、大好きなのよ。
そしてわかったの。私が料理をするのは絵を描くのと同じで、器やそこに添えるサーバーや取り箸なども含めて、テーブルの上が1つの作品。だからすべてが美しくないと嫌なのです。
もう完全に目的を間違えちゃってる感はありますが、そういう性分だから仕方ない。
絵を描くように料理を作って、友だちに食べてもらって、みんなが楽しそうにしているのを見るのが好き。鑑賞してもらって、味わってもらって、楽しんでもらう場面を私が鑑賞するって感じ。
ああ、やっぱり変態だわ。
[この記事を書いた人]やまざき ゆりこ
娘2人がまだ幼い30代前半のときに在宅ワークができるという理由でコピーライターになる。同時期に、伯母の勧めで書と墨絵を始め、以来文章を書くことと絵を描くことがライフワークに。6年前、思いつきで始めた日本画で色の世界にハマり、コロナ禍のおうち時間に身近な動物を描いていたらいつの間にかペットの肖像画家に。57歳で熟年離婚。現在はフリーペーパーのコピーライターをしながら、オーダー絵画の制作に勤しんでいる。着物好き、アート好き、美しいものが好きな1957年生まれ。
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