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それでも離婚したくなったあなたへ

前回のコラムでは、結婚生活で起こる問題点は4つのカテゴリーがあり、それらを集めるビンゴゲームをいかに回避するかが大事だと大きな口をたたいた私ですが、

なんならその回避ができなかったどころか、相手を変えてまでさらにビンゴ実施検証したことをお伝えし、結婚とは相手を変えようが結局は同じような問題に行き着く己の恥を潔く晒したところで、今回に引っ張っております。

人生の荒波をSUPのごとくに麗しく正座して乗り越えておられる皆さま、いかがお過ごしでしょうか。

さて、どんなに腹の座った女たちでもやっぱり人生はうまくいかないこともあり、必死で頑張ってもどうにもならないこともあります。

離婚待った無しの事情になることだって、不本意ながらあるでしょう。

そんな離婚が目の前に迫ってきた時、さあ何からどうしたらと思ったら。そのタイミングでぜひ、今回ご紹介する三つのステップを思い出してほしいのです。

私や周りの先を行く女たちが身をもって知った秘訣を今回も鼻息荒く、前のめりでお伝えしたいと存じます。

ステップ1:離婚を経験した人に会いに行く。

離婚とひとくくりにしても、その時に直面した現実問題は夫婦、家庭の数だけありまして。

それについて実際にどれだけ、だれが、どこに工数をかけた。それを具体例でぜひ知ってほしいのです。

親権で揉めたのか、共同名義のマンションの権利関係だったのか、引っ越しをするのはどちらなのか、社会保険は専業主婦にどれだけ分配されるのか、親の資金で買ったマンションは誰のものなのか、養育費は、保険は、そしてそもそも「我が家の財産全部でいくら?」これ!最重要〜〜〜っ!これが意外にわかっていない。

ハウマッチ我が家の総資産。実はこの実態把握で揉めた方々がかなりおりますのじゃ。

そこで思い出すのは、近年世界中で大ヒットしたイギリスのドラマ『女医フォスター 夫の情事、私の決断』(韓国でも『夫婦の世界』としてリメイク)です。

夫の不倫に気がついて、やれ離婚だ!と憤る女医フォスター。夫は大して稼いでなく、自分は街を代表する病院の経営。どう考えても自分のほうがお金持ってるハズと。

しかしそれまで夫を愛し信頼して全てを任せていたから口座すら分からない。

家庭の資産をなんとかつかもうとして、(ここが彼女のキレっぷりの良さなのだが)夫の税理士を誘惑して一夜を共にし、自分との不倫をバラされたくなかったら口座情報全部出せと脅す…. どんな思考回路。

しかもその税理士の妻は、自分の隣人かつ女友達というのだから、なかなかである。

そうして知り得た自己資産を開けてびっくり、全預金が夫の事業(それも倒産待った無し)に流用されていただけでなく、子供の学費の積立から、自分の両親の遺産まで使い込まれ、自身の給料で買った家も、勝手に抵当にいれられていたという、全く笑えない状況だった。

この夫婦が結果どうなったかは、夫の不倫や子育てなどに悩む女性の、強烈なサンプルになりそうなのでぜひ見てほしい、とびっきりの不倫復讐サスペンスです。

まぁ、フォスター先生ほどでないにしても、離婚の経験を持つ人から実際の話を聞くのは大変勉強になるわけです。

思いのよらない具体例を聞くことができて自らのタスクを確認できますしね。

また、その過去の例を話す相手が、どこに感情を込めたか、語気を荒げるところがあるかをしっかり見ておくことが大事なポイントでもあります。

それこその人が最もきつかった経験であり、しかもまだ消化できていない、大きな労力を払った部分なのですから。これから離婚しようとする人にとってみれば有益この上ない情報源です。

まずは他人の経験を自分ごととしてストックする。これが第一歩です。

ステップ2:離婚後のタイムテーブルを作る

次は離婚後の生活を具体的に想像してみることをおすすめします。どこに住むのか、一人暮らしか実家に戻るのか。

子供がいれば、どちらが育てるのか、どこで育てるのか。どうやって育てるのか。とりあえず思いつく範囲、とにかく細かく具体的に想像してみましょう。

特に子供がいる場合、そしてそれが小学生以下であった場合には、ひとり親で育てる場合、割けるリソースをある程度事前に把握しておく必要があるから。

1日のスケジュールをタイムテーブルで計画してみるといいですね。

朝何時に起きて、何時間あれば子供を送って出勤できるか。仕事終わりから、子供を寝かせるまでに何をしておかなければならないか。習い事の送迎は必要か。買い物はどのタイミングで行くのが効率いいのか。何曜日に宅配を使うかなどなど。

それまでは夜に自分以外の大人、つまり夫が存在していたことで、なんとか回避できていた部分が、突然ひとりになると回らなくなることも多いのです。

あらかじめ面倒なことを想像しておくと、大きな困りごとはある程度回避できます。これはなにも、計画性をもって離婚せよ、という上から目線の大層なアドバイスではありません。

困難を先に想像してみることで、実際に毎日の中で大変なことがあっても、自分に与える心理的なダメージが少し和らぐことを期待してのことなのです。

案外後からボディーブローのように効いてくるのが、日常のほんの小さな躓きだったりします。

疲れて帰ってきて急いでご飯作っている時、冷蔵庫に卵がないのに、オムレツが食べたいと泣く幼子。朝慌てて洗濯している時に限って、紙オムツを一緒に洗ってしまって、キラキラ光る高分子ポリカーボネートの粒を見て泣きそうになったりも。それから、急に明日お弁当がいると言われた時は、全人類を恨んだりもします。

幼い子供と自分しかいない家で、トイレットペーパーがなかった時の悲しみを想像してほしい。

夜に子供をおいてコンビニに買いにも行けず、アマゾンで頼んでも届くのは明日。

もうこうなったら、今日は用を足すたびにシャワーを浴びるしかないのか、いやもう、ウォシュレットで綺麗にしてタオルで拭けばええやん。

自然に乾燥という手もあるな、うん。こうして私は(やっぱり実話なのだが)、数々の困難を乗り越えて、今や多少のことでは眉の位置も移動しない、菩薩のような境地に達したのです。そう。

きっとこれは、離婚前にタイムテーブルシュミレーションがあったおかげなのよ、そうなのよ。

ステップ3:LINEの友達リストを整理せよ

離婚がいよいよ迫ったら、最後に連絡先を整理しましょう。

夫は今後も連絡する必要があるかもしれないので、電話番号くらいは残す。夫の親戚関係を全部ぶったぎりたいなら、まとめてブロックしていく潔さも大事です。

それより何より、最後は自分の大切な友人が本当は誰だったかを確認していく作業をおすすめします。

離婚という局地的ゲリラ豪雨のような日々で、誰が話をきいてくれたか。誰の声が聞きたかったか。力になってくれたのは誰だったか。

結婚しているかどうかに関わらず、親身になってくれた人はいたでしょう。何も具体的には聞いてこなかったとしても、心やすく差し入れをしてくれたり、何も聞かずに子供を預かってくれたりした人もいたでしょう。安泰な暮らしでは気づかなかった人の温かさをきっと知ることになります。

そしてステップ1で話を聞いた友人を思い出しましょう。同じ痛みを味わった同胞はそこにいます。落ち着いたら、今度はあなたも彼女の話を聞いてあげてください。

昔で言えば井戸端会議や互助会、今でいうなら持続可能な感情共有循環、りっぱなエコシステムができあがります。

我々ウナタレ世代は、いつもこうしてお互いに差し出せる何かを少しずつ持ち寄って、温かく、柔らかく、そして適切な距離感を持ちつつも確かな友情を育んでいるわけです。

離婚に直面した時、法的な問題は弁護士、DVなど緊急性の高い問題に対応するには行政機関を頼ることも必要です。そうした制度やプロの手を借りることと同時に、あなたのそばにいてくれる人を頼りましょう。

人に頼れない人は、頼られることもないのです。どうか気にせず、エコシステムを回してください。ウナタレ世代の女たちの力もどうぞ遠慮せず借りてくださいね。

そしてまた、笑顔があなたに戻りますように。(終)

渋谷ゆう子


[この記事を書いた人]渋谷 ゆう子

香川県出身。大妻女子大学文学部卒。株式会社ノモス代表取締役。音楽プロデューサー。文筆家。クラシック音楽を中心とした音源制作のほか、音響メーカーのコンサルティング、ラジオ出演等を行う。音楽誌オーディオ雑誌に寄稿多数。
プライベートでは離婚歴2回、父親の違う二男一女を育てる年季の入ったシングルマザー。上の二人は成人しているが、小学生の末子もいる現役子育て世代。目下の悩みは“命の母”の辞め時。更年期を生きる友人たちとワインを飲みながらの情報交換が生き甲斐である。
著書に『ウィーン・フィルの哲学〜至高の楽団はなぜ経営母体を持たないのか』(NHK出版)がある。

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