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年次検査から、一般の乳がん検診に変わった瞬間に思ったこと

術後10年を超え、正真正銘・乳ぽん(=乳がん)サバイバーの称号を得てから、初めての年次検診に臨んだ。
この10年、年次検診では、マンモグラフィーにエコー(超音波)検査、肺のX線、血液検査に骨密度検査と、まあまあな検査項目をこなしていた。

年に1回、自分のカラダを定点観測するのはなかなか良いもので、ぽんちゃんの再来(=がんの再発)を調べる以上に、体内状況の変化に興味津々だった。まぁ、50を過ぎても、注射嫌いは変わらないので、採血とかは本音を言えばイヤなのだが、それでも検査結果を見るのは、案外、楽しみだった。

それがである。

今年の検査は、なんとマンモグラフィーとエコーだけで終了。
正直、呆気に取られてしまった。だって、今年もしっかり検査する気満々で臨んでいたから。

で、先生に聞いてみた。
「えっ? これだけで終わり?」って。
そうしたら「もう、術後10年過ぎたからねと、全く悪びれる素振りもない先生。

で、気づいた。
そっかぁ~。もう、乳ぽん患者の執行猶予があけちゃったんだ、と。
つまり、今年から私は、乳ぽん患者の経過観察ではなく、普通に健康な人として検査を受けていたのだと。

まさに、年次検診から、一般的な乳がん検診に変わった瞬間だった。

「今」に全集中していた乳ぽん(乳がん)L I F E

思えば、長いようで短い12年だった。
特にぽんちゃん(私がつけた「がん」の愛称)の存在がはっきりしたばかりの頃は、未来とか、将来のことを考えられなかった。

3年後とか、5年後とか。

ましてや10年後なんて、全く実感が持てなくて、「いつか」という言葉は、私の辞書からはすっかり消えていたように思う。
「いつか」がなくなると、どうなるか。
「今」に集中するしかなくなる。
そもそも、病気だろうが、健康だろうが、必ず明日が来る、なんて保証はない。
これが、紛れもない事実である。

でも、命の危機を感じていない時は、普通に明日は来るものだし、1年後、3年後、5年後、10年後と続いていくとどこかで思っている。むしろ、明日が来ない、半年後、1年後のことを考えられないって方が異常だ。
そう思える状況にあること自体、幸せなことだと思うし、未来に想いを馳せることは基本、良いことだと思う。

ただ、一度、「今」に集中するしかない日々を経験した身としては、そこに慣れ過ぎてしまうと、時間の使い方が知らぬ間に雑になってしまうような気がしてならない。
なぜなら、1年後さえも実感が持てなかった乳ぽん治療中の日々では、今日一日がとても貴重に思えていたからだ。


朝、目覚めることができれば、今日も生きていたこと、今日という時間をゲットできたことに心から感謝をした。
朝寝坊で、朝起きるのがあんなに苦手だった私が、であるw

明日、食事ができなくなることもあり得る日々の中では、1回、1回の食事時間も貴重だった。
だから、何を食べるかだけでなく、いかに楽しく美味しく食事できるかに心を配り、噛み締めた。

食事の支度でさえ、心を込めて丁寧に用意したし、盛り付けにも工夫を凝らした。

仕事だってそう。
今日、仕事ができるだけで感謝した。
病気でも、やれることがあるだけで嬉しかったし、自分の存在意義をひしひしと感じたし、生きてるって実感した。

明日が来ないかもしれない。
1年後、3年後、5年後はないかもしれない。
そういう状況に立たされたことで、「今」という時間の意味、そして使い方がガラリと変わった。

人生の幕引き、終焉の時を考えることを、人はあまりポジティブに捉えない傾向があるように感じる。
でも、間違いなく「死」がリアルに感じられたことで、「生」がそれまで以上に輝き出したことは事実だ。

今、思い出しても、当時は輝いていたし、楽しかった。
治療自体は、結構、しんどいものだった。
しんどいはずだったのに、思い出すのは満ち足りた印象ばかりだから不思議だ。

今も、明日が来る保証のない中で生きていることには変わりない。
でも、あの頃のように「死」の気配を強く感じることはなくなっている。
それは、幸せなことだと思う。

と同時に、「今」に全集中して過ごしていた時間を持てたことは、何にも変え難い幸運だったと思う。
気がつけば、1年後、3年後、5年後、10年後に想いを馳せられるようになった。
無理せず、明日でいいことは明日に回そう、そんな風に過ごせるようになった。

食事も、手を抜くときもあるし、朝、あ~もう少し寝たい、と思うこともあるし、大好きな仕事であっても、あ~めんどくさいな、と思うこともある。

それでいいと思っている。

ただ、年に何度か、あの濃密な時間を振り返り、ほんの少しだけ「今」に意識を集中することを続けていきたいとも思っている。
それが、ぽんちゃんの遺言のように感じているからw
その時が訪れた時、胸を張ってぽんちゃんに報告できるよう、「今」を大事に生きていきたい。

つっちー

[この記事を書いた人]つっちーさん

2匹のパグ(♂)と暮らすアラフィフ。働く女性向けに心も財布も満たされる仕事・生き方を支援する学校「はぴきゃりアカデミー」を運営するかたわら、この秋、公式戦復帰を目指し、「時間がないならお金を使え!」をモットーに、週3〜4ペースでテニスのレベルアップに挑戦中。

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