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卒婚からの卒業は離婚じゃないんかい

我らがエア離婚啓蒙家小島慶子さんがいよいよ卒婚を卒業するらしいと聞いて、おお、ようやくこちら側にいらっしゃるわけですね、ウェルカムウェルカム!と小躍りしている離婚経験者のみなさま、なんとそうじゃないらしいですよ。元サヤです。

以前から卒婚、エア離婚だの言っててもそうは簡単にはいかないですよ、綺麗に別れようったって相手には相手の考え方があってだなと鼻息荒くお伝えしていた自分としましても、え?そっちなの?と驚きを隠せないわけでして。

そりゃ、おめでたいですよ。喜ばしいです。なんやかんや言って子供を育てて見守ってきた親同士、やり直せるならそのほうがいいですわ。長い間離れて暮らしていて、ひとり外国で子育てに専念してくれていた夫に感謝してないわけがない。

一方で、旦那さんも日本で出稼ぎして教育費生活費一切がっさい稼いでくれている妻があってこそ、という気持ちだったわけでしょう。そしてその大事な子供が巣立った段階で、で?結局夫婦ってなんだったのかということについて長々素直に話せたとかで。これからは日本で一緒に暮らすんだそう。いや、めでたい。めでたいけど、まぁよくある、なんやかんやいって冷え切った夫婦だったけど単身赴任終わって結局一緒に住み始める昭和のパターンと同じです。

小島慶子さんファンのみなさん〜〜っ!息してるか〜〜〜!!??

新しい女性の生き方、結婚のあり方、離婚の手法として小島慶子さんが自らを曝け出して、これまた固めの大手媒体から「エア離婚」を提唱してくれたことに、自らを重ねて計画を立て、勇気をもらっていた人も多くいたと思います。エア離婚かっこよ!それ採用!私も数年後目指して頑張ろ!と心に小島慶子さんを宿らせて胆力を育んできた皆さま、生きてますか?

エア離婚を経て、実質的に離婚した私の友人はこの春から遠く海外に旅立ちました。今まで自分のことを全部あと回してきた分を、全部取り返すんだそうです。50歳の旅立ちに私は羨望の眼差しを送りました。一方、エア離婚を心に留めたまま、やっぱりこの生活は子供のためにも必要という気持ちで、うまくいかない夫との関係を修復することもできずに、問題を直視することを避けてこれまでとおり生活している友人もいます。

どちらがいいとか悪いとかでもなく、その人の人生の選択はそのひとのもの。他人が計り知れない苦しみもあるし、一方で離婚を思いとどまれる何かの要素、夫婦の絆のかけらだってあります。

みんな違ってみんないい。どれが正解でもなければ、どれが失敗でもない。なのに、なんか新しいやり方がみえるとそれを持ち上げたり、取り上げて賞賛したりするのも言葉だけが一人歩きしてしまう。何回もいうけどエア離婚だの卒婚だの、現実はそんな綺麗にまとまらないんですよ(しつこくリンクはるけど)。

しかし、新しい生き方には新しい単語が似合う。今から考えたら、エアなんてよくつけたな、秀逸すぎ。離婚願望そのものが空気だったんですね。エアかぁ。Airね〜。ちなみにイタリア語で書くとAria(アリア)で、これ、オペラとかの独唱のことも指すんですよ。主要キャラが自分の思いを歌い上げるあれです。まぁなんか自分はこうです、こう思ってます、好きでした。愛してました、でも辛いんです、でも頑張るんです的な歌詞の多いアレです。まんまエア離婚提唱と同じですな。一周回って文化的秀逸な言葉にすら感じます。(たまには私もここで役にたつことも書きました的)

2回も離婚しておいてなんですけど、結婚がうまくいく人はそれぞれがそれぞれに努力しているんだなと思うわけで。それは素晴らしいことで。結婚しているほうがエラいわけでも、離婚できた人がかっこいいわけでも、何回も結婚してる(そして別れてる)人がすごいわけでもなんでもなく。それぞれがそれぞれの人生をやっていけばいいんじゃないですかね。ほんとに。

小島慶子さんが徹子の部屋で明るく素敵な訪問着を着て、夫婦のやり直し宣言をされているのをみながら、やっぱ夫婦っていいもんじゃんと思うなどしたわけで。

でも、そのうちやっぱ一緒に暮らすのなんて無理でした、夫婦は別居が最高!なんて新しい夫婦像を今度また小島さんが新しいネーミングで出してくれるようなこともあるかもなんて、恐ろしいことを考えつつも、春を迎えたのでありました。

渋谷ゆう子


[この記事を書いた人]渋谷 ゆう子

香川県出身。大妻女子大学文学部卒。株式会社ノモス代表取締役。音楽プロデューサー。文筆家。クラシック音楽を中心とした音源制作のほか、音響メーカーのコンサルティング、ラジオ出演等を行う。音楽誌オーディオ雑誌に寄稿多数。
プライベートでは離婚歴2回、父親の違う二男一女を育てる年季の入ったシングルマザー。上の二人は成人しているが、小学生の末子もいる現役子育て世代。目下の悩みは“命の母”の辞め時。更年期を生きる友人たちとワインを飲みながらの情報交換が生き甲斐である。
著書に『ウィーン・フィルの哲学〜至高の楽団はなぜ経営母体を持たないのか』(NHK出版)、『名曲の裏側: クラシック音楽家のヤバすぎる人生 』(ポプラ新書 )がある。

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