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乳がんがんサバイバーをやめてみた

10⽉はピンクリボン月間ということでスタートした『ピンクリボンコラム』も3本目となりました。
今週はご自身も乳がんと向き合いながら、がん患者さんとご家族のための支援法人「乳がんしあわせ相談所」を運営されている代表の松本恵理子さんのコラムです。看護師としても30年のキャリアのある松本さんが、乳がん検診についての大事なポイントも書いてくださいました。

ウナタレマダムの皆さま、こんにちは、松本恵理子と申します。以前、ウナタレでは一度、こちらのコラムを書かせていただきました。

初めましての方もいらっしゃると思いますので、まずは、少し自己紹介をさせてください。

私はこれまで30年程病院で看護師をしており、公認心理師として、カウンセラーの仕事もしております。また、一般社団法人乳がんしあわせ相談所の代表理事としても活動を行っております。

私は、乳がんに罹患して9年が経過しました。乳がんの治療はがん細胞の組織のタイプに応じて治療が分類されます。

私のタイプは、ステージ1ルミナールAというホルモン療法が選択されるタイプで、手術、放射線療法、ホルモン療法を経て現在に至ります。

また家族背景として母親を乳がんで亡くしたうえ、母親の姉妹5人のうち4人の叔母たちが乳がんを発症。さらに、従妹子も卵巣がん、前立腺がんであり、私にはいわゆる遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)の遺伝子を引き継いでいると思われます。

主治医には勧められましたが、いままで私はこの遺伝子検査は受けていません。

なぜかというと遺伝子検査は保険適応になったのですが、今後の発症のリスクが分かったとしても、アンジェリーナジョリーの様に乳房、卵巣、子宮などの臓器を、がんが発症していないのにリスクを考えて、予防的に全摘するのか判断が難しいという問題に突き当たるからです。

このように乳がんの治療にはその先の先の事まで、長い長い不安が付きまとうものだと改めて実感しています。

乳がんの発症後の私は、様々な不安から抑うつ状態となり、毎日生きていることが苦痛でしかありませんでした。

天は自ら助くる者を助く

そんな状態の中では、暗いトンネルの中をとぼとぼと、光を求めて歩いていた感覚でしたが、この経験はもしかしたら同じようにしんどい思いをしている方のサポートになるかもしれない。

それこそが【天は自ら助くる者を助く】ということなのかもしれないと気が付きました。

そして熱意や気持ちだけが先行しても、まずは自分が救われていなければ、他者を救うことは出来ないと感じました。

そう思い立ったが吉日。

早速、このウナタレの編集長であり、日本ママ起業家大学の学長でもある、近藤洋子さんに直接会ってお話し、ママ大に入学。一般社団法人乳がんしあわせ相談所を設立するに至りました。

入学当時は、世の中の全ての乳がん患者さんのサポートをしたい!と、かなり意気込んでいて前のめりでしたが、国家資格の公認心理師を取得して、心理学を本格的に学ぶ中で今は、私には病気は治すことは出来ないけれど、同じ体験を通じて寄り添うことは出来るという感覚を持ちつづけて、カウンセリングを行っています。

実際に相談者さんの多くの方は、「先生はどうやって病気を乗り越えてきたのですか?」というご相談を受けております。

その際には、私は「なるべく病気の事は考えないようにしましょう、そしてどんなに考えても未来の事は誰にもわからないから、出来事が起きたときに初めてそのことを考えましょう」。とお話ししています。

不安だらけの闘病生活ではそんな風に思えないと感じる方も多いと思いますが、病気は人生の全てではなく一部の出来事なのです。

病気でも仕事や家事、育児は続けていかなければいけないし、

病気によってできないことが増えたとしても、それも貴重な経験であり折り合いをつけてできることだけにフォーカスする方が、人生に深みが増し、楽に過ごせるのではないでしょうか。

実際私自身、乳がんによってできなくなったこともたくさんありますし、あきらめたことも山ほどあります。

そして健康だったらしなくていい心配事もたくさんありますが、できないことも私の一部であり、一生不死身で平穏に生きていくことはないのだと実感して折り合いをつけています。

私にとって病気とは一言でいうとスパイスでして、例えばウナギに山椒、お刺身にワサビなど、スパイスや薬味がなくとも美味しいけれど、あった方がより味わい深い感覚を得られるといつも感じています。

乳がんサバイバーをやめた

またこの9年で自分自身が大きく変わったことは、サバイバルすることをやめたことです。

がん患者さんの事をがんサバイバーと表現しますが、私はがんと戦うことよりも、むしろ自分の体の一部であるがんとの共存をしていく方が自然に無理なく、過ごせるようになりました。

もちろん闘病が苦しい状態の方も多くいらっしゃるので、考え方は人それぞれですが、共存共栄の状態であることが、苦しさの軽減につながると私は感じています。

最後にウナタレ淑女のみなさんに、乳がん検診についてお話しさせてください。

そもそもマンモグラフィは、欧米人が発明した、乳房検査でして、乳房が豊かでは無い日本人には、難しい検査ではあります。

受診を躊躇される方に、おすすめは

1 女性の放射線技師さんが検査をしてくれる施設

2 検診センターより、乳腺外科を標榜している医療機関で受診をする

3 誕生日の月に検診をする(自分に安心をプレゼントする)

上記の3点は気が重い検診ための、ハードルを下げると思います。

乳房は体表臓器であり、内臓よりも、治療がしやすくエビデンスがある標準治療が確率しており、乳がんは早期発見で、生き延びていけるチャンスを得られます。

胸の豊かでない私自身マンモグラフィがとても苦手でしたので、上記の選択をした結果、早期に発見が出来て正確だったと感じます。

ちなみに乳がんは、高齢者でも、罹患します。

閉経したら、大丈夫ではありませんよ。

今月はピンクリボン月間ですから、検診を頭の隅に置いていただければと思います。


[この記事を書いた人]松本恵理子(Eriko Matsumoto)

一般社団法人乳がんしあわせ相談所 代表理事
看護師 公認心理師
1967年横浜市生まれ 聖マリアンナ医科大学看護専門学校卒業

子供の頃、キャンディキャンディキャンディを夢見て看護師を目指す。結婚後は早々に主婦になる事を目指すも、命の現場の臨場感にたまらなく心がひかれ、気がつけば30年以上ナース生活を送っている。
9年前の乳がんの闘病経験から、自分にはまだ残された役割があると感じ、がん患者さんとご家族のための支援法人を設立。
趣味は資格取得と猫を愛でる事。小型船舶一級資格を活かし、渡し船の船長になることを目論んでいる。

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