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1番目の元夫が神扱いされる件について

この三月、めでたく次男が大学をちゃんと4年で卒業してくれました。よかった、よかった。

長男もすでに社会人で既婚者なので、これで上の息子ふたりの育成プロジェクトはとりあえず一段落であります。このふたりは、最初の夫との子供。これにて彼との養育費で繋がった関係も終焉となりました。ありがとう元夫。

養育費未払いの父親が3人に2人とも言われる、このヘルジャパンにおいて、元夫の行いは私の友人界隈で神レベルの賞賛を浴びております。それもこれも、離婚して15年以上、一回も払い遅れが無かっただけでなく、いわゆる一般的な養育費を上回る学費など、あらゆる“まとまった金額”を、「こどものため」という信念ひとつで振込続けてくれておりました。「一緒に暮らしていたら、子供たちが当然受け取る俺の金」というのが彼の思いではあったようですが、ここまでしてくれる人はそうそういないのが現実です。

なんでそんないい人(脳裏に¥マーク浮かんでる気もするけど)と別れたんですか、その元夫さんを紹介しろという前のめりなオファーも、私の友人独身女性から後を経たない現在。夫婦にはいろいろあって、まぁその、離婚に関してはどっちがどうとか、それぞれにいろいろなんだけど、まぁとにかく。夫婦としては破綻したけど、子供たちにきちんとここまで責任を持ってくれたことについて、元夫が神だった以外の要素とコツをちょっとお話ししたほうがいい気もしています。すでに離婚しているみなさんも、これから離婚しようとしているみなさんも、「あきらめないで」。

まず諦めちゃいけないのは、どんなに相手の顔を二度と見たくなかろうが、さっさと縁を切りたいほど憎んでいようが、養育費のことだけはきちんと書面にすることです。自分だけでなんともできなかったら、専門家、つまり弁護士にちゃんと間に入ってもらいましょう。私と最初の夫は協議離婚、つまり調停も裁判もせずに合意の上で離婚しましたが、財産分与や養育費についての書類は弁護士に作ってもらいました。さっさとちゃっちゃと終わらせて、清清したいとは思いましたが、ここで踏ん張った(踏ん張ってくれた)おかげで、これまで息子ふたりについては心配なく、好きなように好きな道に進んでもらえました。そして、元夫から息子たちに対して節目節目に「父親として、社会人の男性として」の助言ももらえるオプションがくっついてきて、これは本当に良かった側面です。

あの時、自分の昂りまくった感情に身を任せて(私にありがち)、「もういい!何もいらない!さっさと別れて!」みたいなことで終わりにしなくて本当に良かったと心から思います。だから、みなさん、諦めないで!(2回目)

これも全部子供のためです。経済的な負担を父母双方が請け負うことは当たり前ということと、たとえ少額であってもお金の負担をすることで、継続的な“親である意識”を忘れさせないものでもあり、そして「もしもの時(自分が死んじゃうとか)」の蜘蛛の糸でもあるからです。ただ、弁護士に頼むのにも費用がかかるし、どの弁護士がいいかも分からないという方もいらっしゃるでしょう。そういう時は自治体が開催している法テラスで聞いてみるとか、身近で離婚した人に聞いてみてください。費用に関しても、最初に払う着手金を成功報酬型にしている事務所もありますし、離婚に強いと言われる先生情報はX(旧Twitter)でもたくさん見られます。

そして本当は、公正証書にすることをおすすめします。私の友人は離婚届を出す前に夫婦で公正証書を出しに行ったそうです。おかげで、離婚後に元夫が再婚し、新しい妻になった人が養育費の支払いを渋ったり、嫌がったりした際の防御になったとのこと。ないよりはあったほうが良いもののダントツ一位、それが公正証書です。

そんな面倒なことを、こんな揉めてる状態でできっこない!無理ゲーすぎ!という方。だからこそ、弁護士に間に入ってもらうのがよいのです。自分でやらない精神的な安定感があります。(ただ、0にはなりません。弁護士からの現状報告メールですら気持ちを乱されることはもちろんあります)ただ、いきなり弁護士から夫側に連絡がいくと、「はぁ?!っ?ふざけんな」みたいに意固地になられる可能性もありますので、そこは夫側の性格から判断しつつ、誰かによき塩梅で間に入ってもらいたいところですね。まじで。

その上で、どうにもこうにも間に入った弁護士でも収まりきらない場合には、離婚調停をして、場合によっては裁判もして家庭裁判所の中で決着をつけていくしかないのですが、これまたかな〜〜〜〜〜り時間もかかる(場合によっては何年もかかる!)上に、精神力を要するので、これまた途中で投げ出したくなって「もう養育費もいいです!さっさと離婚して!!!」って短気で損気になりがちなわけで。

こうって書き並べるだけで、離婚って大変だなと思いますよね。私の2回目の離婚はまだ数年前のことなので、ネタ文章にしてしまうのは相手の新しい家族の手前、まだできないんですけど、とにかく1回目より数十倍大変でしたわ。何か悲しくて私はこんな面倒なことを2回もしたんだと思うんですけど、人生はいろいろで、その時々に一生懸命だった結果がこれです。これも自分の人生だと思って受け入れていくしかない、うん。

とはいえ、離婚で子供たちに迷惑をかけた(かけている)のは確かなので、それが少しでも和らぐという意味でも、何らかの形で親の責任は果たしてほしいと思うこの頃です。そして、共同親権について法的な部分で話し合いが持たれているようなんですけど、これについては、そもそも共同親権が持てるくらいの穏やかな関係性で離婚できていれば可能、くらいのオプションとして考えて欲しいというのが、偽らざる気持ちです。DV、児童虐待のような場合だってあります。他人が想像できないような壮絶な家族関係だってあります。なんでもかんでも一律に、これが子供の福祉!みたいな旗を振ってもらいたくはありません。離婚の際には、子供の養育費すら、まともに話し合いのできない状態が、何日も、何ヶ月も続いてるわけで。そんな時に養育費はもとより、親権やなんやかんやを冷静に話し合うのがどれだけ大変なことか。

養育費をずっと払ってくれた1番目の元夫とでさえ、離婚後数年間は全く会うこともなく、連絡すらまともに取りませんでした。今では神と崇められる元夫との間でさえ、ふたりでしっかり友人のように話せるようになるには、相当な時間が必要だったわけです。養育費を払う、子供にとってのよい関わり方を一緒に暮らしていないほうの親も親身に考える。それが当たり前となって、私の元夫が神扱いされなくなる時代になることを、まじで、めちゃくちゃ、強烈に、願っています。

拗れた人間関係の最もキツい状況、それが離婚です。どうかみなさん、冷静になるのは諦めて、上手に他人を頼ってください。それがきっと十数年先に「正解」となります。諦めないで!(3回目)

渋谷ゆう子


[この記事を書いた人]渋谷 ゆう子

香川県出身。大妻女子大学文学部卒。株式会社ノモス代表取締役。音楽プロデューサー。文筆家。クラシック音楽を中心とした音源制作のほか、音響メーカーのコンサルティング、ラジオ出演等を行う。音楽誌オーディオ雑誌に寄稿多数。
プライベートでは離婚歴2回、父親の違う二男一女を育てる年季の入ったシングルマザー。上の二人は成人しているが、小学生の末子もいる現役子育て世代。目下の悩みは“命の母”の辞め時。更年期を生きる友人たちとワインを飲みながらの情報交換が生き甲斐である。
著書に『ウィーン・フィルの哲学〜至高の楽団はなぜ経営母体を持たないのか』(NHK出版)、『名曲の裏側: クラシック音楽家のヤバすぎる人生 』(ポプラ新書 )がある。

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