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ウナタレお悩み相談室(3)〜どうするキャリアプラン?人生選択に迷った人への処方箋〜

先日とあるメディアの人生相談で、作家の林真理子さんが答えていらしたのですが。それがあまりに驚愕だったので、不詳渋谷、それに憤慨しつつですね、前回のご相談者N子さんのお悩みに、さらに深くお答えしたいと思い、今回も鼻息荒く筆圧高すぎで進めたく存じます。

まずですね、何がびっくりってあなた。36歳の働かない上にジャニーズ追っかけの娘を持つ、60代シングルマザーのご相談に、あろうことがあの林真理子先生が「マッチングアプリを使って、早く結婚させるべし」ってお答えになったのですよ。結婚を勧めたんですよ!(鼻息)

売れないコピーライターから血を吐き土を舐めるように作家にのし上がって、ルンルンを買ってお家に帰っていた、あの、林真理子先生が。自分が稼いだ莫大なギャラでハイブランドをまとっていた自立した女の憧れだった、あの林真理子先生が。こともあろうか、ニート36歳を持つシングルマザーに、「早く結婚させろ」と宣うとは、これ何のギャグかと。よもや、老害マッチョイズム旧態然某大学理事会に染まってしまって、昭和のおっさんの発想に戻ってしまったの?まりこ先生(涙目)

ニート36歳で家事もしない娘を、どこかの貴徳なそこそこ金持ちの家に嫁としてニートのスライドを目論むなんて。自立させろっていわないどころか、押し付け先を探すんですってよ。いや、もしかしたら我らが(かどうかは知らんけど)まりこ先生は、これまで積もった男性へのある種仕返しに、この娘を使おうとしているの?と勘繰ってしまう。それほどこの回答には破壊力がありました。いや、ほんとにこの答え、みなさんどう思います?という流れで前回のN子さんのお悩みをさらに深掘りしてまいります。

元カレが復縁を迫ってきて、聡明なN子さんは悩んでいました。そもそも元さやってどうなのという点については、前回のコラムをご参照いただくとして、実はもっとN子さんには考えなくてはならないことがあったのです。

N子さんは26歳。化粧品メーカーで広報を担当していて、仕事に充実感があるそう。だからこそ、自分のキャリアを考え、先輩女性たちも見ながら「30過ぎくらいまでに責任あるポジションについて、それから結婚して35歳までには一人子供がほしい。育休は少しで切り上げて、40歳までにはもう一人子供がほしい。最終的には商品企画まで任せてもらえるポジションをこの15年くらいまでで得ていたい」という、絵に書いたようなキャリアプランをしっかり持っていました。

だからこそ、「それほど私のキャリアについては考えてくれていない」元カレが、一度は嫌になったわけです。

N子さんへの交際の申し込みには、彼も結婚への具体的なビジョンを持ち始めたからこそ。まずは二人の将来感をすり合わせる必要がありそうです。

しっかり自分のプランを持ち、理路整然と自分のプランを話せるN子さんですから、きっと元さやに戻るとしても、同じように彼に自分の思いを伝えることができるでしょう。そこは全く心配していません。私が人生の先を生きた女の厚かましい助言をさせてもらえるなら、「そのプラン、一回横に置いといてほしい」ということです。

今の20代、30代は、上の世代の失敗をきちんと見ています。ちょうど社会は女性を一定数採用しなきゃいけないという風潮とあって、大学生の就職活動の際から女性にむけてキャリアプランと人生プランを作るように指導されています。もちろん、それは疑いようもなく大事なことです。

自分が社会の中でどんな目標をもって、どんな貢献ができるかを考え、そして勉強と努力を重ねることは大切です。ただ、それはあくまでも「全部自分のこと」です。

世の中には、自分がいくら頑張ってもどうしようもないことが起こります。そんなことは分かってる、という返事が聞こえてきそうですがほんとうにそうでしょうか。実際にキャリアプランや人生設計を作る際に、自分以外の外的要素は考慮に入れません。

ちょっと考えてみてください。地震や災害といったどうしようもないことも起こり得ます。それ以外でも、例えば会社が合併や倒産といったこともあるでしょう。自分だっていつ病気になるかわかりません。人生計画というものは予想外のことで簡単にダメになってしまうものです。

それに、人生のステップを考えるときは、それ、ほとんど自分以外の人が絡みませんか?結婚は30歳までと言っても、相手がそう思っているとは限りません。それなら彼を説得する?それができるかもしれませんし、新たに同じ価値観の人を探すのも一案でしょう。自分のプランが第一だとしたら、それが最良ですね。

では、子供を持つことについてはどうでしょう。当然ですが思ったとおりに妊娠はできません。仮に計画とおりに妊娠したとしても、その赤ちゃんの健康状況や能力、個性まで母親に決定権はありません。

これは私のことですが、40過ぎて3番目の子供がお腹にできたとき、切迫早産で2ヶ月半も入院を迫られ、株式会社化したばかりの会社が潰れそうになりました。こんなこと例え計画してても、対処法までは考えられなかったと思います。24時間点滴を打たれて、トイレだけのために立ち上がる生活の中で、私が作った自分の会社の短期中期の事業計画なんかふっとびました。まあ、そもそも計画性のない妊娠をした自分のせいなんですけど、それでも今、ここに第三子が元気に生きていることのほうがよかったことは言うまでもありません。

また無事に出産できたとしても、子供は自分の子供だけど別の人間です。思うとおりになんてほんとに行かないですよね。子供をもった瞬間に、自分の人生のプランはその子の人生と否応なしにリンクしていくわけです。計画なんてあったもんじゃない、ということも当然起こりうるわけです。

人生のプランを作ることはとても大事なことです。目標は生きる勇気になります。でも私の周りにいる素敵な女性たちは、常にしなやかに変化に同調し、時に自分の計画や目標の軌道修正をしながら、よりよく生きています。簡単に言っちゃえば、そもそも大それた人生プランをどこかで捨て去ってます。ウナタレコラムニスト陣が皆、口を揃えて「3年先の自分のこともわからん」と言ってて笑いました。

ただ、間違って欲しくないのは目標や計画をしても無意味、と言っているわけではないということです。三年先の自分がわからない、というのは言い換えると「何があってもなんとかできるだろうし、何か面白いことがあったらすぐ飛びついてみる準備がある」という自分を信じる力です。

N子さんが3年後に主任というポジションに就きたいなら、今できることが社内で明確にあるはずです。5年後に絶対海外で仕事がしたいなら、今年中に語学を万全にして、来年には現地リサーチに行く必要があるでしょう。公務員や資格試験はそもそも年齢制限があります。計画なしには何もうまく進まないでしょう。ただ、先の予定を作りすぎてそれに固執し、今この瞬間に大事な決定ができないのは本末転倒かなと思うのです。元彼のことも含めてね。

良くも悪くも、人生は毎日の小さな決定と選択の積み重ねです。今しなければいけない選択が今できなかったから、この先で大切なことを手のひらからこぼしてしまうかもしれません。大事な決定を先延ばし、考えないようにした結果が、36歳のニート母として人生相談を送ることになったのではないでしょうか。選択と決定には好機ってあるんです。

N子さんはまじめで聡明な女性ですから、こんな人生行き当たりばったりの見本のような私に回答させることがそもそも間違いかもしれません。でも、私にそんな相談をしてくれたということは、何かもしかしたら自分でも引っ掛かっていることがあるのでしょうね。

計画は大事です。目標も大事です。でも数的目標に囚われ過ぎないで。

N子さんにとって何が人生の正しい選択か。それは私にはわかりません。ただひとつだけ言えるなら、選んだ選択肢を“正解にする”ことはできる、ということです。

自分の力を持ちつつ、周りの人と助け合いつつ、大事な人に大事だよっていいながら、少し先の見通しをつけつつ、計画を進めたらいいんじゃないでしょうか。ダメそうだったら目標を達成できなかった自分を責めるんじゃなくて、目標が間違ってたなとか、納期が間違ってたなって思えばいんじゃないでしょうか。選んだ道があまりにひどかったら、そこでまた軌道修正するか、その酷い道を自分で舗装して歩けばいいんです。

大事なことは、自分で歩くっていうことです。

選んだ道を歩きながら、小さな曲がり角や分かれ道でその度に迷いつつ、はるか遠くにあると信じる自分の理想を見ながら、今日も小さな選択を積み重ねる。まずはそれでいいんじゃないでしょうか。だれかのキラキラしたキャリアの裏には、雨水を飲んだ時期があったりするものです。私のまわりの、素敵な女性たちみんながそうだと言っていいくらいです。全部うまく自分の予定とおりにしなきゃと自分を追い込んで考えなくていいんですよ。

まじめにちゃんと考えられるN子さん、もう少しだけ周りをみながら、「今しなきゃいけない選択はなにか?」をもう一度考えてみてください。きっとN子さんにはできます。よく考えずに勢いで決めてしまったとしても、それはそれでなんとかなります。ここにいるウナタレ先輩たちをみていただけたら、それでも生きてる人たちもいるって元気になれることと思いますよ。保証します。

渋谷ゆう子


[この記事を書いた人]渋谷 ゆう子

香川県出身。大妻女子大学文学部卒。株式会社ノモス代表取締役。音楽プロデューサー。文筆家。クラシック音楽を中心とした音源制作のほか、音響メーカーのコンサルティング、ラジオ出演等を行う。音楽誌オーディオ雑誌に寄稿多数。
プライベートでは離婚歴2回、父親の違う二男一女を育てる年季の入ったシングルマザー。上の二人は成人しているが、小学生の末子もいる現役子育て世代。目下の悩みは“命の母”の辞め時。更年期を生きる友人たちとワインを飲みながらの情報交換が生き甲斐である。
著書に『ウィーン・フィルの哲学〜至高の楽団はなぜ経営母体を持たないのか』(NHK出版)、『名曲の裏側: クラシック音楽家のヤバすぎる人生 』(ポプラ新書 )がある。

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