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「いのち」の話

近代以前の世界の平均寿命は20歳代だったのだそうです。これはペストなどの疫病の流行や戦争があったり、子どもの死亡率が高かったためですが、それにしても短い。江戸時代では平均寿命は35歳〜40歳程度。でも全員が若くして死んでしまうということではなく、葛飾北斎のように90歳まで生きていた人もいるので、あくまでも平均です。何しろ生後1年間の乳幼児死亡率は20〜25%だったのです。翻って今は人生100年時代。2023年の日本人の平均寿命は女性が87.09歳、男性は81.05歳です。でも平均寿命は令和3年、4年と2年続けて前年を下回っているとか。

私の曽祖母は97歳まで生きていました。祖母は96歳。母には2人の姉がいますが、上の姉は88歳、下の姉は84歳、母は76歳で亡くなりました。つまり、早く生まれる程長生きだったのですね。この法則でいくと、私は76歳より前に死ぬことになる。ということはあと10年もないということ。あくまでもこの法則が正しければ、ということですが。

私は50代以降、やりたいことを躊躇なくやってきたので、思い残すことはありません。本当にやり残したことはゼロ。魂の仕事(「書くこと」と「描くこと」)に巡り会えて、それがある程度形になったし、合言葉にしていた「イケメン・長身・フランス人」との恋愛も果たしたし、娘たちはそれぞれ幸せに暮らしていて子孫も増えました。私1人から7人も増えたんだから動物としては務めを果たした感がある。あらゆる点でもう気が済んでいるので、今日死んでも悔いはない。自分の命に執着はないのです。

ところがです。先日、中学生の頃からの親友が膵臓がんのステージ4だという知らせを受けて動揺しました。ほんの数ヶ月会わないうちに14キロも痩せたと聞いてショックを受けました。自分の命に執着はなくても、親友の命には執着してしまうよ。彼女のお母さんは99歳まで生きていたのに、娘の彼女がなんで? 医療は日々進歩しているし、すぐにどうこうなるということではないと思うけど、彼女は死んだらダメだと思った。

だって彼女は人の役に立つ善良な人なのです。東京郊外の公民館で子どもを持つ若いママ向けの講座を企画・運営していて、自身は前に出ることはないのですが、面白い講師を探す名人。彼女が企画する講座やイベントで、今までどれだけのママたちが助けられたかわからないのです。元々は幼児教育の専門家で、一貫して子どもと関わってきたのですが、今ママたちにシフトしているのは、親が幸せなら子どもも幸せだからです。彼女の仕事の後を引き継ぐ人はいないんだから、いなくなったらみんなが困るじゃないの。

長く生きればいいというものではないし、母などは3.11もコロナ禍も知らずに旅立ったのは幸運だったとも思います。でも同級生には自分と同じだけ生きていてほしいと思う。でも、もしかしたら、この先起きるかもしれない大地震とその後を知らずに去る方が幸せなのかもしれないとも思ってしまうのです。

やまざきゆりこ


[この記事を書いた人]やまざき ゆりこ

娘2人がまだ幼い30代前半のときに在宅ワークができるという理由でコピーライターになる。同時期に、伯母の勧めで書と墨絵を始め、以来文章を書くことと絵を描くことがライフワークに。6年前、思いつきで始めた日本画で色の世界にハマり、コロナ禍のおうち時間に身近な動物を描いていたらいつの間にかペットの肖像画家に。57歳で熟年離婚。現在はフリーペーパーのコピーライターをしながら、オーダー絵画の制作に勤しんでいる。着物好き、アート好き、美しいものが好きな1957年生まれ。

墨絵&日本画 梨水
http://risui-sumie.sakura.ne.jp/wp/

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