片付けアドバイザーが考える「防災の備え」(備蓄編)
元日からの能登地方の大きな地震。衝撃でした。
なぜ元旦に?なぜこのタイミングで?考えても答えの出ない疑問に頭がぐるぐるする中、自分に出来ることは?と少しばかりの募金をさせてもらいました。
報道から流れてくるのは、次々にわかる被害状況と、道路の寸断、孤立する集落、避難所までたどり着けない人たち、届かない支援。
被災した方が一番大変な思いをしているのはもちろんだけど、東北で起きた東日本大震災の時に東北出身の自分が被災地に行けないことにもんもんとした日々を送ったように、離れた場所にいる北陸出身の方々も眠れない日々を過ごしているのかもしれません。
一日も早い復興をお祈りいたします。
災害時に一番大切なこと
それはまず「自分の命を守ること」
死んでしまったら何もできません。どんなに備えていても何の役にもたちません。たとえ身一つで逃げることになったとしても自分が助かる行動を優先してください。
小さなお子さんやペットがいると、どうしても弱いものを守らなきゃと優先してしまいがちです。でも大人の自分が助からなければ、結果子どももペットも共倒れの可能性は高いのです。自分の命があってこそ他の命を助ける行動も出来るのです。まずはあなた自身が助かってください。
命が助かってこそ、次の行動も出来ると言うもの。そしてその時に大事になってくるのが日頃からの備えです。
仮に避難所に避難することになっても、緊急持ち出し袋を持ち出すことが出来れば少し安心です。自宅が無事で在宅避難となった時に備蓄があれば、しばらくは何とか暮らしていけます。それには日頃からの準備が大切になってきます。
防災×片づけを発信しています
私は、片づけアドバイザーとして「防災×片づけ」という視点から日頃発信したり、講座を開かせていただいたりしています。
片づけられない、物がありすぎる、そんな多くの片づけ現場で「今大地震が来たらこの荷物の下敷きになって助からないのでは?」と感じることがままあります。そしてたいがいのお宅で押し入れの奥や納戸の奥から出てくるのが、昔買って忘れ去られていたであろう、防災セットや非常食の数々。
何か災害があるたびに「備蓄しなきゃ、備えなきゃ」と思い大量に買い込む。でも買ったことで安心してしまい、最初は見えるところに置いておいた備蓄の数々もいつの間にか押し入れの奥の奥にしまい込まれ、気が付くと賞味期限切れや使用不可の物が大量に出てくる。
災害への備えは大事!でもそれで自分のスペースや日々の暮らしが圧迫されてしまうのはどうなんだ。自分の家に、家族に必要な物を適正な量でわかりやすい場所に収納するスキルが必要なんじゃないか?
そう考え防災の勉強を始めて、防災備蓄に何が必要か?どう収納するか?を皆さんにお伝えし考えていただくきっかけになればいいなと活動しています。
片づけ現場の備蓄あるある
片づけの現場でよく見るのが、賞味期限切れの非常食。
大きな災害があると、何か備えておかなきゃ!と思い長期保存の非常食を買い込んでしまう方も多いようです。しかも同じものを大量にお高い値段で。3年保存、5年保存の非常食はそのまま置いておけばいつでも使え安心なのですが、その間に何もなければ買ったことさえ忘れてしまいます。そして気が付いたときにはすでに賞味期限が切れていて大量に破棄しなければならないことに。でも片づけが苦手な方は、この「捨てる」という行為がとても苦手な方が多いのです。
「もったいない」「せっかく買ったのに」「高かったのに」「まだいけるかも」なんて、いろいろと理由をつけては捨てきれないのです。「ちょっと賞味期限切れちゃったけど試しに一つ食べてみたら意外といけた」と言う方も、でも結局同じ種類の非常食を食べ続けることも出来ず、思い切りよく捨てることも出来ず、そのまま押し入れの奥にまたしまい込み何年もたってしまう、なんてケースも多いのです。
次に、大量のトイレットペーパーの在庫です。
いろんな災害が起こるたび、トイレットペーパーが無くなるなんて噂がどこからともなく広がって、スーパーのトイレットペーパー売り場に人が殺到する姿を見かけます。コロナが流行りだした当初の頃にも、スーパーの棚からトイレットペーパーが消えたことがありました。
買い込んでもそれを使えばよいのだけれど、またいつ無くなるかと思うとそれをストックしたまま新たに買い足してしまう、もしくは使いきれない量の在庫を抱えているのにまた同じ騒動があると買い込んでしまう。特に高齢の方のお宅にそんなトイレットペーパーの山が出来ている気がします。
あるお宅では、物置に業者さんが買うような大きな段ボールの箱入りペーパーが3箱もストックしてありました。また。ある高齢者の一人暮らしのお宅には、一生かかっても使いきれないくらいの量のトイレットペーパーが積みあがっていました。
足りなくなることへの不安が大量購入に走らせてしまう、買ったことで安心してしまう、気持ちはわかります。でもその荷物が生活の場所を占領してご自身の暮らしを窮屈なものにしてしまっていたり避難経路をふさいでしまったりしたら、どうでしょう。
そして、しまいっぱなしで忘れられる防災セットがあります。
今は防災セットと言うと一次避難用の緊急持ち出し袋が主流ですが、12年前の東日本大震災の後にはいろんなところで大きな箱入りの防災セットが販売されました。当時それを購入された方も多いかと思います。持って逃げるものではなく、自宅に備えておくものとしていろんなグッズが一式そろって入っていて、これ1箱あれば安心!と謳われていたものです。
そんな防災セットが押し入れの奥から出てくるお宅が多いのです。そして皆さん「あら、こんなところにあったのね!」とおっしゃいます。
もちろん食品と違い賞味期限があるわけではなく、置いておいても大丈夫なものもあります。でも長期保存の間に劣化してしまうものもあるのです。特にビニール製品は劣化しやすかったり、ウェットティッシュがカラカラに乾いてしまっていたり、衛生用品が使えなくなっていたりと、いざ使おうという時に使えないこともあります。押し入れの奥にしまい込まれ、いざという時に使えない防災セットは何のための備えでしょうか。
備蓄は一軒一軒違うもの
災害が起きた時に、まずは我が家には何がどれくらい必要か?を知ることが大切です。
水や食料は最低3~7日分、トイレ周りの消耗品は多ければ1か月分くらいの備蓄をと言われます。では1人が1日に必要とする量はどれくらいでしょうか?1人暮らしのお宅と6人家族のお宅では備蓄の量も大きく違ってきます。収納の場所の広さも違います。
例えば、飲料水として必要な水は1人当たり1日3ℓです。4人家族で計算すると
3ℓ×4人×3日=36ℓ 2ℓペットボトルで18本 2ℓ6本入りの箱が3箱
3ℓ×4人×7日=84ℓ 2ℓペットボトルで42本 2ℓ6本入りの箱が7箱
例えば、女性1人が1日に使うトイレットペーパーの量は平均12メートルです。トイレットペーパー1巻きがシングルで60メートルとすると5日分です。
30日÷5日=6ロール 1人1か月で6ロール
6ロール×4人=24ロール 12ロール入りトイレットペーパー2袋
これは家族構成で女性が多いか男性が多いかによってもだいぶ変わってきます。またトイレットペーパーの種類、シングルかダブルか、2倍巻きか3倍巻きかによっても備蓄の量は違ってきます。
このように、それぞれのお宅の家族構成によって必要な物やその量も違ってきます。ご自身のお宅で何をどのくらい必要かをそしてそれを収納する場所を、ざっくりでいいので一度考えてみてください。備蓄の収納は1階と2階など場所を分けた分散収納をおススメします。
また、非常食の賞味期限切れを防ぐ意味でも、食料品はローリングストック法で消費しながら買い足すことを意識してください。
ここで言う食料品は特別なものでなくても大丈夫です。もちろん長期保存の非常食を準備しておくのも良いのですが、賞味期限が半年~1年くらいの物で、出来れば日頃食べなれた味のもの、自分や家族が好きなもの、食べ方や調理法が簡単なものを準備するのがおススメです。それには必ず普段から食べてみること。非常食は普段食べないじゃないですか?なのでいざという時に口に合わない、食べられない、なんてこともありがちです。非常時でもある災害時に大切なのは出来るだけ普段と変わらないこと。いつもと同じ味の物があること、温かい食べ物が食べられることが心の安定につながるのです。
我が家の備蓄のこだわりは、レトルトのカレーは無印良品(美味しいしいろんな種類があって選ぶのが楽しい、家族みんなが好き)です。以前は、備蓄でしまっておくものだし安いスーパーのレトルトカレーでもいいかと思っていましたが、いざ備蓄の入れ替えで食べようと思っても美味しくなくて誰も食べないのです。普段の時でも食べたくない物を非常時に食べられるか?非常時だからこそ美味しく食べられるものの方がいいんじゃないか?と思い、それからカレーは無印良品です。また乾物は普段から食べているひじきや切り干し大根、春雨など調理法がわかりやすいものを、あると嬉しい嗜好品は羊羹(甘いものを食べられる、心の贅沢)やステイックコーヒーを用意して、備蓄の入れ替え時期(半年~1年に1回)に食べるときに美味しいと言って食べてくれるものや、無駄なく食べられるものを、家族の意見を聞きながら準備しています。
また鍋とカセットコンロと水があればポリ袋で調理ができるパッククッキングを試して、使える食材を探ってみたりレシピを考えたり、日頃から乾物を使った料理をしたり、なるべく水を使わない調理法を考えてみたり、日常の中に防災が組み込まれるような工夫が大事です。
生活用品の防災グッズも1度試しに使ってみてください。簡易トイレを組み立ててみる、使い捨てトイレを使ってみる、懐中電灯やランタンは時々点けてみる、そして停電して真っ暗な時にどこにあったらすぐ使えるかを考えてみる、ラヂオを聞いてみる、などなど、知識だけよりも経験に勝るものはありません。是非、何もない平時にこそいろいろ試しておいてください。
[この記事を書いた人]sachi
片づけアドバイザー 今年還暦を迎えたタイミングで4人目の子育てと母の介護から卒業。 やっと戻ってきた自分の時間に、好きなことやりたいことを模索する日々。 好奇心の赴くままに行動する日常をお届けします。