興奮する服でなくちゃ
先日ジャンポール・ゴルチエのミュージカル「ファッション・フリーク・ショー」を観て大興奮した私です。
ファッション、詳しくはないけど好きなのよ。ゴルチエのコーンブラはぶっ飛び過ぎていて着られないけど、見る分には刺激的で面白い。
ミュージカルは、ゴルチエの幼少期から大成功するまでの物語を背景に、音楽とダンスと映像とファッションで表現するそれはそれは素晴らしいステージでした。
70〜80年代はファッションが元気な時代でした。大きく分けると2つの流れがあって、1つはアイビールックからハマトラへ進むトラッド路線。もう一つは、コム・デ・ギャルソン、ヨウジ・ヤマモト、タケオキクチ、イッセイ・ミヤケなどのDCブランド路線です。
私は高校時代はロック姉ちゃんだったので、周りがアイビーだらけの中で、長い髪をカーリーにしてロンドンブーツを履いて学校に行っていましたが、大学生になると、DCブランドも着たしハマトラもやったし、サーファーにもなるというミーハーぶりを発揮していました。ワンレン・ボディコンもやったけど、それはもう少し後か。
でも基本、「モード」が好き。デザイナーが命をかけて作った洋服が好きなの。今でもヨウジ・ヤマモトは好きで時々お店をのぞきます。20年以上前の服を大事にしているし、今でも着ることができます。不思議と何年経っても古臭くならないのよ。この前はイッセイ・ミヤケの店で試着して興奮しました。あと、昔のディオールやシャネルも素敵だなぁと思います。憧れちゃうよ。
失われた30年の間にモードはすっかりおとなしくなりました。私が仕事に通う新宿南口にはデザイナーの登竜門・文化服装学院があります。私が学生の頃はひと目で文化の学生とわかるほど個性的な服を着た子がいたけど、今はどれが学生かわからないくらいおとなしい。あんなに主張のない子たちがデザイナーになれるのだろうか。
去年から今年にかけてファッションデザイナーの展覧会が目白押しです。モードも巻き返しを狙っているのかな。チケットを持っていたのに行きそびれたマリー・クワント、シャネル、ディオールと、どれも素晴らしい展示だったそうです。ディオール、行きたかったけどチケットが手に入らず断念しました。9月にはイブ・サンローラン展をやるので、今度こそ見逃すまいと、役得でチケットを手に入れる算段をしました。
ファッションは文化です。ゴルチエのショーを観て、クリエーションの素晴らしさを改めて感じました。服ってただ着ればいいってもんじゃないのよ。主張がないと興奮しない。興奮しないと面白くない。若者は堅実で洋服なんかにお金を使わないのかもしれないけど、そんなことでは文化が廃れるよね。文化は無駄の中にこそ生まれるものだから。
だからもっとモードが元気になればいいと思うの。でないと、いつまで経っても着たい服が出てこないんだもん。ユニクロは部屋着にはいいけど、そればっかり着てたら感性が鈍る。誰でも着ているような服は面白くない。だから着物に走っちゃうんだよね。
[この記事を書いた人]やまざき ゆりこ
娘2人がまだ幼い30代前半のときに在宅ワークができるという理由でコピーライターになる。同時期に、伯母の勧めで書と墨絵を始め、以来文章を書くことと絵を描くことがライフワークに。6年前、思いつきで始めた日本画で色の世界にハマり、コロナ禍のおうち時間に身近な動物を描いていたらいつの間にかペットの肖像画家に。57歳で熟年離婚。現在はフリーペーパーのコピーライターをしながら、オーダー絵画の制作に勤しんでいる。着物好き、アート好き、美しいものが好きな1957年生まれ。
◆コラムの感想やコラムニストへのメッセージはウナタレ 「友の会」コラムニストの部屋にて。
わかる、わかる!とコラムを読んで共感したあなた、友の会でお待ちしております。
コラムニストの部屋
https://tomonokai.unatale.com/category/columnist/