性の欲求をフェムテックで解放したら、そこはウェルビーイングな世界だった。
「わたくし50代も半ばをすぎたんですが、更年期になってから愛するパートナーとのSEXが痛くてね。いわゆる性交痛があって悩んでいたんですよ。で、色々調べて、今は病院に行って膣内レーザーを受けているんです。だって、痛い思いしてたら楽しめないじゃない。死ぬまで楽しみたいの私。うふふ。」
美しいマダムは画面越しに、妖艶に微笑んだ。
ここはウナタレ編集部、Zoomにより開催された昼下がりの座談会。
「フェムテックとはなんぞや?」と題して集まった、ウナタレレディ達の経験にともなうカラダの問題は冒頭の爆弾発言なども飛び交う、リアルで熱気ある開催と相成ったのである。
「レ!レ!レーザー!?」
「膣内レーザー」という、インパクトの大きなワードにその場にいた女たち全員が息をのんだ。
参加者たちの脳裏にはそれぞれが知り得る限りのレーザーが浮かんだであろう。
座談会とはいえ、みんな大人だ。聞きたいことを思ったままに口にするのは憚られる。
そんな空気を打ち破るように、ウナタレ編集部タレ子が口火を切った。
「そ、それって価格的においくらくらいなんですか?お高いイメージありますが・・・」
いきなり値段聞いちゃったよ、テレビショッピングじゃないのだから。
前のめりにもほどがある。
「3回で10万ちょっとね、だから一回35000円くらい。」
いける。
叶姉妹くらいしか利用できなさそうなお高すぎる施術ではなさそうだ。
タレ子の次の質問を待ったが、頭の計算機を弾いているのか次の質問がない。
仕方ない、聞くしかない。
「そ、それって、中と外、どちらにあてるんでしょうか?」
中と外、我ながらなんと言う愚問だ。
いや、しかし中と外、女性のあの部分は中と外で形成されているではないか。
「中と周りと外ね。」
オール アラウンド、レーザーである。
「痛いんですか?」
タレ子が被せ気味に聞く。それ、ほんとみんなが想像していたこと、よく聞いた。
「ちょっとね、麻酔のクリームを塗ってからやる少しチリチリする程度。中はわからないわ。入り口が硬くなっているからなのよ、性交痛の原因って。実際にやってから自分で触ってみても全然違うの、柔らかくなる、ふわふわ。ダーリンも喜ぶ。」
は!!!!!!
相応しい言葉が出ないが、そんな情報までありがとうございます。
もう一度いうが昼下がりの午後である。
正直に言おう、ウナタレ編集部のフェムテックリテラシーはそんなに高くはない。
フェムテック?それって美味しいの?なんて言ってしまうレベルに情弱だ。
そんな我々ウナタレ編集部が、入門の段階でフェムテックの奥義に触れてしまった気分だ。
マダムは続けた。
「私はそういうことが充実してるってとても良いことだと思うの。セルフプレジャーとかもだけど、相手がいるのならね。体を重ね合わせることで愛情も深まるし、それ以外のコミュニケーションの潤滑になるでしょう。充実させるために協力しあっている感じ。お互いにね。」
セルフプレジャー。
新しい単語が出てきた。文脈から想像はできるが念のためググってみた。
気になる方は調べてみてほしい。まさにフェムテックが大活躍する世界である。
そうだ、今回の座談会の趣旨に戻らねば。
今回、我々ウナタレ編集部がこの座談会を開いたのには目的があった。
ウナタレレディたちに本音で聞いてみたい事があったのだ。
「フェムテックはウェルビーイングな社会を創るのか?」
カタカナが続くと混乱するので翻訳する。
「女性のカラダや健康の課題をテクノロジーで解決することは、幸福な社会を創るのか?」
言葉だけが上滑りする時代に、ウェルビーイングなどのカタカナ言葉はご用心だ。
我々ウナタレ世代、耳障りの良い言葉で本質を見て見ぬふりするような、なんとなく「良いこと」に騙されるほどもうウブじゃない。だから、半世紀にも渡り女のカラダと付き合い続けたウナタレ世代には、その問いに対するヒントがあるはず、そう思ってこの座談会を開いたのだ。
それぞれのウェルビーイング、だからこそ
参加してくれた方達は、40代〜50代の油の乗ったウナタレレディたち。
はじめまして更年期から、どっぷり更年期、そしてグッバイ更年期と、「更年期」というトピックひとつでも出会いから別れまで経験豊富な女達ばかり。
フェムテックの中でも、メノテックと言われる部類なのかもしれない。
50代の参加者の方の更年期談がはじまった。
「私、更年期になって、布団から起きれないほどの鬱になってしまったんです。何にもしたくない、できない。でも自分で調べて行った婦人科の先生がおじいちゃんで、全くその心身の辛さを理解してもらえなかった。更年期?そんなの病気じゃないよ、これでも貼っておきな!って帰されちゃって、それで、もういいや、医者になんか行かない!ってなってしまった。」
なんということでしょう。
女の人が生理で股から血を流そうと、産後で悪露が出てようと、働かされていた悪夢の時代を思い出してしまうではないか。病気じゃない、そうだけど、下手すると重病のように辛い人もいる。これ貼ってって何を渡されたのだろう?更年期除けのおふだ?お守り?
いやいや、今、私たちに必要なのは魔除けのおふだではない。
テックなんだ。こう見えて私たちウナタレ世代はテックへの順応性は高い。
黒電話からポケベル、PHSからガラケー、スマホ。Apple Watchも使っていたりする。テックをどれだけ使いこなしてきたか、ウナタレ世代こそテックの申し子と呼んでくれていいくらいだ。
実際に、どんなフェムテックの商品やサービスがあったら欲しいかという質問には
・更年期の治療に使うプラセンタ注射とかをもっと安価に手軽にできるようなものが欲しい
ガソリンスタンドみたいに、プラセンタスタンドとかね。忙しい合間に注入できるステーションあったらいいな。
・尿もれや更年期の不順出血にも対応できる薄い吸収ショーツ
薄くてオシャレな吸収ショーツはある、が、しかし、若い女の子に似合うデザインだ。へそのあたりまで包むような我々世代でも恥ずかしくないものもあったらいいよね。
・フェム検診
更年期に備えたり、更年期の症状を早めに予測できたり、対策できるようなもの。なってはじめてわかることは多いけれど、早めの予防ができるのならぜひ未来に渡したいバトンだ。
・VIO脱毛などで白髪になっても抜けるようなもの
白髪になっても・・。私たちはいつまであの毛というものに悩まされる人生なのか、よくイメージされる宇宙人に毛がない理由もわかる。進化の過程でなくなってもいいもんなんじゃないかね、毛。
テックよ。ウナタレたちが両手を上げて待っている。
それならばと、タレ子が真顔で質問する。
「みなさん、今の自分の状況を見た時にウェルビーイングな状態と思えていますか」
「仕事とか自分のやりたいことを考えてみたときに、今はウェルビーイングな状態ではないんですが、そこに向かって行ってるのかなとは思います。今はウェルビーイングな状態を想像できるようになってきている感じです。」
大事なキーワードが出てきた。
「ウェルビーイングな状態を想像できること」これめちゃくちゃ大事なんじゃないか。今日は良い1日だったなと感じる日もあれば、そうではない日もある、人間なんてそんなもんだ。でも、ウェルビーイングな自分を想像できること、そこに向かうには今自分には何が課題なのかなと、個人もだけど社会もそのイメージを持てるのかが大事な一歩なんだろう。
・会社員だけど拘束時間が長い、時間のコントロールが効かなくてハッピーと思えない。だから個人事業主に向かおうと準備をしている。
・自営業で仕事をしつつ親の介護もやっている。実家の母が入院して実家のある田舎と自宅のある都会を行き来する中で、いつか田舎で暮らしたいという気持ちが出てきた。田舎で暮らす間は自分の好きなことをして、自宅の方では仕事などをするという二拠点生活ができるようになったら良いなと思う。
現時点でウェルビーイングかと問われたら、全力でイエスとは言えないのかもしれない。でもこのウナタレレディ達の声は、漠然とでも自分にとっての幸福がイメージできている。
私たちウナタレ世代が、更年期や介護や子育てなどをを乗り越え、一歩進んで自分らしくワークもライフも過ごせるとしたら、あとは何が必要なんだろうか。
・肩書きを外したい。誰々のお母さん、●●社の□□さんのような役割を外して「〇〇せねば」を外したら、もっと自由になるんじゃないかって思う。
・自分らしさを見つけて、本当の仲間や友人を作って行けたら、いい歳の取り方ができてウェルビーイングになるんじゃないかなと思います。
なるほど。
幸福とは総合的なものだ、でもそれぞれに自分のイメージしている幸福に必要なピースがあるのだろう。そんなことを考えていると、冒頭のマダムが口を開いた。
「私は以前は全くウェルビーイングじゃなかったの。会社を経営していて常に仕事や人間関係のしがらみに追われていた。でも、何を思ったのか全部手放してしまえと、都会の家も売って、田舎の空き家暮らしをはじめたら、今はとてもウェルビーイング。誰も私のこと知らない土地でね、とれたてのお野菜やお魚もらったりして、プライドとか肩書きとかも全部捨てて、すっからかんになったおかげでなんだか新しい自分になっちゃった。もうワクワクしかないのよ、これから何が起きるのかしらって。うふふ。」
テーーーーーック!!!!
遠くにいたので呼んでみた。
テック。今の話を聞いていたか?
あえて言うなら幸福の定義なんてないも同然だ。人それぞれ、生まれた瞬間から唯一無二、世界にひとつだけの花なわけで、何を持ってしてウェルビーイングかの基準値はない。
自分にとってのウェルビーイングは百人いたら百通り、だからこそテック、お前が必要なんだ。
月経や不妊治療、出産、育児、子育て、婦人科系疾患、女性向けケアアイテム、セクシャル・ウェルネスに関わるもの、これらの悩みや問題は個人差があるからこそ、誰かの我慢で社会は構成されてきていたのかもしれない。
都会の生活も仕事のしがらみも全部手放したマダムが求めたのは、いつまでもパートナーと幸せな関係を続けるための「フェムテック」だった。半世紀も自分のカラダと付き合ってきたウナタレ世代の私たち、まだまだ腐れ縁だからと諦めずにフェムテックを取り入れて、もっと貪欲にウェルビーイングを求めて良いのかもしれない。
今回の座談会を終えて、タレ美は思った。
フェムテックは「もちろん」ウェルビーイングな社会を創る一助になる。と、同時に社会にいる女だけではない生き物たちにも須く「テック」が必要だと。
私の幸せだけではなく、あいつの幸せも、あの子の幸せも、全てが交わってウェルビーイングな社会を構成するのだろう。
そんなフェムテックを学べるイベントが、2月19日(フェムテックの日)に開催される。
フェムテックに出会ったばかりで付き合い方を考えている方やフェムテックと本気のお付き合いをはじめた方も、既にフェムテックとは濃厚な関係の方も、ぜひ参加して欲しい。
女性も男性も自分らしく生きることをあきらめない社会のために、フェムテックと目指す未来を考える時間になることは間違いないだろう。
[この記事を書いた人]ウナギタレ子・タレ美(Taleko/Talemi)
加齢応援マガジンUNATALE編集部
姉のタレ子1972年生まれ、妹タレ美1973年生まれの更年期姉妹。
夜な夜な子供部屋で聴いていた「オールナイトニッポン」が今の姉妹の人格形成に影響を与えている。「A面」よりも「B面」、「ゴールデン番組」よりも「タモリ倶楽部」を愛する、根っからの「裏面好き」。SNSには露呈しないウナタレ世代のリアルな叫びを届けたいと日夜、奔走している。
ポリシーは「Your nudge, no tale」(ウナギノタレ)=「理屈こねてないで動こうぜ」