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孤独を知らない私

 グリム童話に『こわいことを知りたくて旅に出かけた男」という話があります。ゾッとしたことのない男が、その感覚を知りたくて旅に出るという話。子どもの頃、この話が大好きだったのですが、みなさんは知っていますか? 暗闇も怖くない、おばけを見ても死体を見てもゾッとすることができない男が、ゾッとしたいばかりに魔法のかかったお城に3日間泊まり、次々と出てくる魔物をやっつけ褒美としてお姫様と結婚するのですが、最終的にはドジョウがいっぱい入った桶の水を浴びせられて、ようやくゾッとすることができたというお話。

 この話を思い出したのは、友人がFacebookで呟いていたこんな言葉を見たからです。
「孤独に強い人なんているんだろうか。孤独とは。」

 離婚して11年。別居していた時期を含めると独りで暮らすようになってかれこれ20年近くになります。独りでいることに寂しさや不安、悲しみや恐怖を感じることが「孤独」だとしたら、私はめちゃくちゃ孤独に強い。というより、私は孤独を感じたことがないのです。孤独というものが何か頭ではわかっているけど、感じたことはないのです。だから独りでいることを「退屈」だと思うことはあっても「淋しい」と感じることはない。淋しいってどういうことなのかも明確にわからないから、この感覚については完全に欠落しているのだと思います。

 私は視覚優先のタイプなので、衣食住では自分の身を置く「住」が一番大切。好きなものに囲まれた空間で、お気に入りの音楽を聴いたり好きな海外ドラマを観ながら過ごすのは至福の時間。そうやって充電できるからこそ、明日への活力が生まれるのです。休みの日には朝起きた瞬間から寝る瞬間まで絵を描いていたりすることがありますが、誰かのご飯のことを心配したり人の用事で作業を中断する必要もなく、好きなだけ好きなことができる環境は快適以外の何ものでもありません。とはいっても、こんな私も20代半ばから40代後半までは家族のお世話をするために自分のことを全部後回しにしていたのだから、きっとあの頃に一生分の仕事をやり尽くしたのだと思う。今はご褒美の時間だね。

 「孤独に強い人なんているんだろうか」と書いていた友人が、私が孤独を感じない理由について「ゆりこさんは自分で意識していなくても、色んなつながりを感じているからなんじゃないかな」と言いました。ああ、そうかも。私は孤独を感じたことがないのではなく、“独りだと感じたことがない”のかもしれない。常に繋がっているたくさんの友人たちがそこにいるような感覚があるし、もっと言えば生きている人たちも死んでいる人たちもいつも自分の周りにいる感じがする。会いたい時にいつでも会えるSNSのお陰もあるのでしょうね。

やまざきゆりこ


[この記事を書いた人]やまざき ゆりこ

娘2人がまだ幼い30代前半のときに在宅ワークができるという理由でコピーライターになる。同時期に、伯母の勧めで書と墨絵を始め、以来文章を書くことと絵を描くことがライフワークに。6年前、思いつきで始めた日本画で色の世界にハマり、コロナ禍のおうち時間に身近な動物を描いていたらいつの間にかペットの肖像画家に。57歳で熟年離婚。現在はフリーペーパーのコピーライターをしながら、オーダー絵画の制作に勤しんでいる。着物好き、アート好き、美しいものが好きな1957年生まれ。

墨絵&日本画 梨水
http://risui-sumie.sakura.ne.jp/wp/

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